人生のリスタートの地として選んだ国立

人生のリスタートの地として選んだ国立

長年住み慣れた静岡から国立に引っ越してきたのは、2020年1月。しんしんと雪が降る寒い日でした。

シングルマザーとして子育てと仕事に邁進する日々を過ごし、娘は武蔵野美術大学に進学。ひとり暮らしを始めるにあたって、紹介された街が国立でした。

駅前からまっすぐのびる自然豊かな大学通りと美しい街並み。行き交う人たちには、そこはかとなく品の良さが感じられ、「この街なら安心して送り出せそう。ここで新生活を始められるなんて、素敵だな」と羨ましく思っていました。

その後も娘のところに足を運ぶたびに、国立への憧れは増すばかり……。雰囲気のあるカフェや雑貨店も、気が付けば私の方が詳しくなっていました。

そして昨年末、さまざまな流れから自身のこれからを見据えて「人生をリセットしよう」と決断。長らく務めた会社を退職し、リスタートの地として選んだのが国立でした。「この街で新しい暮らしを始める……」その思いに一片の迷いもありませんでした。

駅前には約2年に渡る再構築工事を終えた“赤い三角屋根”の『旧国立駅舎』が完成を間近に控えていました。大学通りに桜が咲き誇る“4月上旬にオープン”というお知らせを目にするたびに、「この春から新しい暮らしを本格的にスタートさせるんだ……」と、期待に胸を膨らませていました。

ところが……。

年明けから騒がれ始めた新型コロナウイルスの感染者が、瞬く間に国内でも増加。気付けば外出時のマスクは必須アイテムとなり、4月にはまさかの“緊急事態宣言” 発令。感染を避けるために外出もままならない状況となり、行ってみたかったあの店やこの店も軒並み休業に……。もちろん『旧国立駅舎』のオープンイベントも見送られてしまいました。

混沌と先が見えない非常事態の中、SNSをチェックしていると「#国立テイクアウト」「#国立エール飯」をつけた投稿が続々と登場。国立市の地域情報を発信している『くにたちNAVI』には、「国立テイクアウト&デリバリー情報」が立ち上がり、7月には『LOVEくにたち わがまち応援プレミアム付き商品券』が1万冊発行される(あっと言う間に完売、残念ながら購入できず)など、さまざまな形での支援が登場。

未曾有のピンチを街全体で応援し、乗り越えていこうと全力を尽くす熱い “地元愛”と“強い絆”に、新参者は少々驚かされつつも、とても温かい気持ちになり、微力ながら“新しい地元”の発展に貢献させていただく日々です。

コロナ禍の影響……というわけではありませんが、国立で暮らすようになってから、部屋に花を飾るようになりました。ちょうど緊急事態宣言の最中に誕生日を迎えたこともあり、買い物に行ったお店でご紹介いただいた富士見通りの『Mon amour(モナムール)』さんで、自分のために花束を注文。とても良心的な価格でこんなに素敵に仕上げていただいたことに感激し、その後も足を運んでお花を購入しています。

早いもので、“国立暮らし”も10ヶ月目。思い描いていたものとはちょっと違った形でのスタートでしたが、少しずつ馴染んでいくほどに、この街が好きになっていく毎日です。

こうして『国立暮らし1年目』のコラムを書かせていただいているのも、偶然から生まれた小さなご縁がスタートでした。憧れと勢いだけで飛び込んだ縁もゆかりもなかった国立で知り合えた最初の同業者、『国立人』編集の加藤 優さん。

加藤さんからご紹介いただいた方々とのご縁がさらに広がり、この秋からは職場とも家とも異なる、まさに“サードプレイス”になりそうな新しい場所『国立本店』での活動にも参加させていただくことになりました。

初めてお会いする方たちばかりのはずなのに、なんだか昔から知っていたようなやさしい懐かしさが漂う空間。ここでの活動内容などは、次回以降にご紹介させていただきます。

いくつになっても勇気を出して一歩を踏みだしてみることの大切さを、身をもって感じている今日この頃。ゆっくりと少しずつ変化していく私の“国立暮らし”。これから1年を掛けて、のんびりとご紹介させていただきます。

(書き手:小倉一恵/国立暮らし1年目)

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「国立暮らし1年目」とは

外から見たときと、内側から見たときのイメージは少し違います。そんな『国立暮らし1年目』だからこそ見えてくるものを綴るコラムです。

小倉 一恵 小倉 一恵

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