敬愛でつながるテーブル

敬愛でつながるテーブル

国立の旭通りに佇む、隠れ家のようなお店『TO:RI(トーリ)』。

店主の愛甲真希(あいこう・まき)さんが、そこで伝えていることはとてもシンプル。

「素材を生かす」「五感に触れる」をテーマに、「玄米」からひろがる食や暮らし、その背景にひろがる敬愛する作り手の思いやストーリーを、価値観の合う人たちとともに届けていきたいと考えています。

もくじ

見えないものを届けたい

「玄米は白米に比べると、炊くのに手間がかかって毎日は食べたくないという人や、味が苦手なお子さんも多かったりします。でも、『TO:RI』の玄米ごはんは普段のお米のようにパクパク食べたくなる、お子さんから年配の方まで毎日食べられる、そう言ってくださる方が多いんです」

TO:RIの『もっちり炊き立て玄米』は、もちもちとしてぬかの臭みもなく、また食べたくなる味。

「シンプルなものほど、食べて五感で感じてもらわなければ伝わらない」と愛甲さんは話します。そのために、2020年にお店をオープンしたそうです。

気さくな笑顔がトレードマークの愛甲さんは、フードクリエイターとして企業から依頼を受け、彩り豊かな物語の一ページのようなスタイリングを多く手がけてきました。

当時から変わらず大切にしているのは、食材に込められた愛情の「架け橋」となること。

「農家さんから届いた段ボールを開けたとき、野菜やお米にかけた愛情がそのまま伝わってくるような気がするんです。私にできることは、素材を活かすために自分の中の“ひきだし”を使うこと。自分が出せるアイデア、身につけたスキルやセンスで、見せ方を変えてたくさんの人に届けること」

農家さんとの繋がりをずっと大切にしてきた愛甲さん。

自然のものであればあるほど、その年、その時期によって手に入りづらくなる食材もあります。けれども、スタイリングの前日にスーパーに駆け込むのではなく、目の前にある素材のよさをいかに引き出すかという仕事を、繰り返し行い続けてきました。

そうして作られた料理は、まさに五感で味わうものです。

なかでも玄米に着目したのは、仕事をしながらシングルで子育てをしていたときのことでした。

「仕事をしながらの子育ては本当に慌ただしいもの。体にいいものは手間がかかる。けど、子どものためにも稼ぎたいし、手作りもしたい。そんな日々の中で、“ゆとりがなければ暮らしに取り入れることができない”ものより、“誰でもどんな時でも味わえる”ものについて、考えるようになりました」

そうして生まれたのが、お店でひとつひとつ丁寧に全て手作りをしている『もっちり炊き立て玄米』です。

レンジや蒸し器を使えばすぐに「炊き立て」と同じものが食べられて、冷めてももっちり。店内だけでなくオンラインショップでも購入でき、日々の食卓にのぼる「ごはん」としてだけでなく、友人や家族など、大切な人への「贈り物」にも喜ばれているそうです。

“玄米”からはじまる、自分らしい献立

TO:RIで販売しているのは、炊き立てを急速冷凍した『もっちり炊き立て玄米』と、天然醸造の味噌とごぼうなどの根菜を火入れし調理した日本伝統のなめ味噌『鉄火みそ』、農家さんの果物を活用した季節のスイーツなど。

店内では、農家さん直送の食材を使った日替わり・週替わりの玄米ごはん定食、自家製の酵素ドリンクや季節のドリンクなどを気軽に味わうことができます。玄米の炊き方や料理について「もっと知りたい」人に向けた料理教室も開いています。

玄米を中心に据えた理由の一つには、2009年にマクロビオティック師範の資格を取り、2021年にメディカルシェフ養成を修了して得た学びがありました。

「体調を崩したことをきっかけに、マクロビオティックを勉強して、全てのものごとには陰と陽があることを知りました。一言では説明しきれないことではありますが、人生にはおめでたいハレの日、静かに過ごすケの日があるように、人もどちらかに偏りすぎると心身に不調が出ます。そこでてっとり早いのが、食べものから陰陽をバランスよく取り入れて、心身のバランスを取ることです」

食べもののエネルギーと聞けば、ついカロリーや栄養素の数値ばかり考えてしまいますが、陰陽について学んでみると「落ち込みがちで冷え性なのは“陰”の強い野菜ばかり食べていたから」「気分が高ぶってイライラするのは“陽”の強い脂っこいものばかり食べていたから」というように、実は腑に落ちることがたくさんあります。

そして、玄米は陰陽どちらも兼ね備える、“軸”の食材なのだそう。

「まずは、日々の生活の中に玄米を取り入れていただき、美味しさを知ってほしいと思っています。続けていくことで『今、体が何を欲しているか』がわかってくるんです。それさえわかれば、自分で心身のバランスを取ることができます」

玄米から考えていく献立は、陰陽や栄養の観点からもバランスを取りやすいですし、はじめやすくもあります。「こうしなければならない」のではなく、その人が「美味しい」と感じるものなら取り入れるのが、愛甲さんの信条。TO:RIでは、楽しく続けられるバランスのいい食事や、その考え方を知ることができます。

あなたも嬉しい、わたしも嬉しい

コロナ禍にオープンしたTO:RI。試行錯誤の中で、やがて新たな方向性が見えてきたそうです。

「お店を持つための一歩は、とても勇気がいること。それを身をもって知っているからこそ、そこを目指してチャレンジしたい人、何かを学んで自分の力にしたい人と一緒に働いて、応援したいと考えています。TO:RIの食材には全てストーリーがあります。それを知り、愛してくれて、食材を“活かす”アイデアを出し合いながら高め合っていけると嬉しいです」

「食材を敬愛し、アイデアやスキルで見せ方を変え、たくさんの人に届ける」スタイルの愛甲さん。そのアイデアも一人ではなく、スタッフとともに作り上げていくもの。

TO:RIの場所を使って、自分がやりたいことを実践してほしいとも考えています。

「『あなたも嬉しい、わたしも嬉しい』がTO:RIの理念です。背景にある想いを知って、敬愛でつながる心地よいつながり。そんなふうに、作り手、スタッフ、お客様、まちの人と、これからもずっとつながっていきたいと思っています」

店舗情報

店名
TO:RI Natural Foods Laboratory
HP
https://tori106.base.shop/
問い合わせ
https://thebase.in/inquiry/tori106-base-shop

東京都国立市東1-17-3 ベニーラ17 1F

加藤 優 加藤 優

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