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東京野菜とビジネス

農林水産省によると、東京都の生産額ベース食料自給率は約4%だといいます。

人口約1300万人にものぼるこの大都市で、食料のほとんどを他の地域に頼っていることを示すこの数字にはやはり納得してしまいます。東京に暮らしている中で、緑豊かな並木道や公園を目にすることはあっても、農家さんの手で畑の作物が育ち、収穫され、出荷されてマーケットに乗るという一連の流れに出会うきっかけはなかなかありませんでした。

けれども、約4%の自給自足の光景は、都市の中に残る畑とそのすぐそばの小さなまちの中に広がっていたのです。

野菜と一緒に情報を届ける、地場野菜の直売所

国立駅南口から西へ歩いて5分のところに、おしゃれなマルシェのような直売所「しゅんかしゅんか」はあります。店頭に並ぶ新鮮な野菜のプライスカードには、それぞれに農家さんの名前と産地が書かれており、少し足を伸ばせば畑の様子を見に行けるような近場ばかりではじめは驚かされました。

「しゅんかしゅんか」では、国立の南側に広がる谷保地域をはじめ、立川、国分寺、日野の契約農家へ毎朝集荷に伺って、朝採れの旬野菜を仕入れています。

野菜のほかにも、多摩地域で製造されている醤油やソース、豆腐や卵、加工食品なども豊富に並びます。「なるべく地域のものを取り扱うことで地場産業を応援したい」と、店長の岩田野花さんは話します。

新鮮なまま届けられる野菜の美味しさと、生産者がわかる安心感からお客さんにも喜ばれている反面、旬の地場野菜ならではの問題もあるといいます。

農家さんの収穫がひと段落し、次の収穫が始まるまでの「端境(はざかい)期」と呼ばれる期間は売りものがほとんどなくなり、「お客さんに申し訳ない」と感じることも。

野菜の成長は気候や天候にも左右されやすく、毎年同じタイミングで旬が訪れるとも限りません。

「お店ができたばかりの頃、ピーマンくらいしか入荷できなかった日もありました。ひたすらお客さんに謝っていましたね」と、岩田さんは当時を振り返ります。
そんな苦い経験を経て、いつも一定の品数が揃うように毎日集荷スタッフと連携をとり、農家さんに作付けを調整してもらい、新しい品種の取り扱いを増やしていきながら、お店作りの工夫を重ねているそうです。

「しゅんかしゅんか」に買い物に行くと、お客さんとスタッフとの距離感が本当に近いことがわかります。挨拶を交わす回数も普通のスーパーや小売店と比べると格段に多く、そのままスタッフと雑談を始めるお客さんも。

「料理が好きなスタッフが多いので、お客さんにレシピを聞かれると熱が入ります。これまで料理をそんなにしなかったスタッフも、働きながら野菜の知識を増やしていくうちに『料理好き』になっていく人が多いですね」

野菜を取り扱う仕事は、袋に詰めたりラベルを貼ったりといった地道な作業の連続。そんな1つ1つの仕事を楽しみながらお客さんと接するスタッフの自然な笑顔が、活気あふれるお店の空気を作り出しているようです。

市場の声を生産者へ届ける「集荷」の仕事

「この野菜が欲しい」というお客さまのニーズや「この野菜を入荷すれば売れるはず」という売り場の声を、生産者である農家さんへ届けるのは集荷スタッフの大切な仕事です。

午前7時半。開店前の「しゅんかしゅんか」から、集荷の車は出発します。

この日は、立川市内の農家さんへ集荷に回る「株式会社エマリコくにたち」副代表の渋谷裕輔さんに同行させていただきました。届け先は、立川の直売所「のーかる」です。

「東京の野菜は、冬が最も種類豊富になります。白菜、大根、キャベツなどずっしりと重い野菜が中心なので、かなりの体力仕事。現在女性スタッフも1人働いてくれていますが、はじめは『女性には体力的にきつい仕事かもしれない』と言って止めたほどです」

集荷スタッフは体力に自信があることのほか、売り場の状況を確認しながら、必要な数の野菜を仕入れるための臨機応変な対応力も必要です。

集荷件数は季節によって変動しますが、およそ20~30件ほど。車で20分圏内に直売所と農家さんが収まるという都市農業ならではの利点を活かした、効率の良い集荷ルートを回ります。

「朝の時間は、農家さんにとっても大切な仕事の時間。自社スタッフで集荷に伺うのは、農家さん自身が出荷作業を行う手間と時間をなくして、できるだけ畑仕事に集中してほしいという意味も込めているんです」

その言葉の通り、軒先に野菜と伝票を置いて畑仕事に出ている農家さんもいれば、仕事の合間に雑談を楽しむ農家さんも。

「農家さんとの雑談は、僕らにとっても貴重な時間です。今年の野菜の出来を伺えば、売り場で活かしてもらうことができますし、売り場の声やニーズを農家さんへ届けることもできます。ウチはただ野菜を取り扱う店ではなく、野菜と一緒に農家さんの想いや情報を伝えるインフラでありたい。そのためにも、集荷先の農家さんと信頼関係を築くことは大切です」

話好きな人もいれば、話よりも畑仕事に集中したいという人、昔ながらのこだわりを持つ人、新しい品種や栽培法への挑戦を楽しむ人、それぞれに合わせたコミュニケーションをとる集荷スタッフにとって、「人との触れ合いはかなり密なもの」だと渋谷さんは話します。

お子さんの成長を間近で実感することや、入園式や入学式を迎えるのを見ると感慨深い気持ちになることも。「人生に寄り添っているんだな」と感じることも多いそう。

「人生と同じように、野菜もその生産方法も農家さんによって違います。自然農にこだわる農家さん、畑に手を加えて綺麗に管理する農家さん、味にこだわる農家さん、綺麗な形にこだわる農家さん。それぞれに個性や多様性があって、それが都市農業の良さだと思っています」

この日、渋谷さんは農家さんとの雑談の途中で「この品種を是非作って欲しいんです。ウチが優先的に買い取ります」と野菜の種を手渡していました。

「6~7月頃に種を植えれば、そんなに手がかからず1ヶ月ほどで収穫できるようになります。ウチのお客様にも人気が出ると思いますよ」と、栽培方法や作付け計画まで提案していることに驚きました。農家さんも「それならやってみようかな」と顔をほころばせます。

集荷の仕事は、売り場と生産者の声をつなぐ大切な機会になっているのですね。

ビジネスの力で都市農業を盛り上げ、都市に畑を残していく

「都市農業」とは、都市と調和しながら存在している農業のこと。

「しゅんかしゅんか」をはじめとした、複数の東京野菜の直売所を経営する「株式会社エマリコくにたち」では、生産地とマーケットの距離が近い都市農業ならではの利点を活かし、集荷から買取、販路の開拓まで、独自の「地場野菜ビジネス」を構築しています。

「都市農業を盛り上げ、畑を残していくことが『エマリコくにたち』のミッション」と、渋谷さんは真剣な眼差しで理念を語ります。

「そのためには、地元で採れたものを、地元の人に食べてもらって、地元の人に愛着を持ってもらうことがまずは一番大切です。都市農業において、うちの役割は流通業。地元の農家さんの野菜をいかに効率的に集めて、欲しいと思っている人たちにお届けできるか。そのマーケットを構築していきます」

「エマリコくにたち」の社名には、国立から「縁」を作り、「街」を育て、「利益」を生み、社会に「貢献」するという意味が込められています。

2011年の創業以来、国立駅前の直売所「しゅんかしゅんか」、2012年に初のレストラン「くにたち村酒場」、西国分寺駅構内の直売所「にしこくマルシェ」、2014年には立川駅前の直売所「のーかる」と新規出店を重ね、とても勢いのあるベンチャー企業であることがわかります。
地域密着の生産者のネットワークを活かして、地元スーパーや百貨店への卸事業も行っています。

大きな利益を生み出すことが容易ではない「野菜」というジャンルで、創業当初から事業拡大を続けている「エマリコくにたち」。

「農家さん、市場(お客さん)、会社、3つとも持続可能なバランスについて考えています。そこが一番悩んでいるポイントかもしれない」と、渋谷さんは話します。

社員やアルバイトスタッフに対して「ビジネス的な視点を常に持って」と話しているという、代表の菱沼さんと副代表の渋谷さん。2人は一橋大学商学部の先輩後輩同士でもありました。

多くの一橋大学の卒業生がそうであるように、菱沼さんと渋谷さんもまた業界大手と言われる会社で働いていました。卒業後も定期的に勉強会で顔を合わせていた菱沼さんから、「国立に戻って起業しようと思う」という話を聞いたのは、2009年12月のこと。その飲み屋の席で「僕も一緒にやります」と渋谷さんが即答したことは、社内でも伝説になっています。

「学生時代から、いくつかの選択肢で悩んだ時はより難しい方を選びたいと思っていて」と、渋谷さんは爽やかに笑います。

「もともと、ビジネス的じゃないものに対して、ちゃんとビジネスとしてマネジメントするということに興味がありました。例えば、福祉や農業というジャンルです」

当時渋谷さんが働いていた会社は、工場での製造用の機械部品をカタログで購入できるシステムを構築し、業界でもトップの業績を上げていました。社員はカテゴリの商品を丸ごと任され、カタログ誌面の制作から、新商品の製造企画、主力工場との交渉、効率化によるコストダウンの管理など、全ての采配を任せてもらえるような環境だったといいます。

「一社員ではあるけれど、常に経営者としての視点を持ちながら働けるような会社でした」と渋谷さんは振り返ります。

「一般的に、会社には開発部、製造部、営業部みたいなそれぞれの役割分担があって、自分の役割の仕事をやればいいのだと思います。でも、僕は一部分のことだけをやるという仕事に楽しみを見出せない。関わっているビジネスの全体の流れを知って、必要なことは何かを考えながら仕事をする方が、よりやりがいを感じられると思っています」

「エマリコくにたち」のスタッフが意識しているという「ビジネス的な視点」とは、そのマインドにあるのかもしれません。

「ウチのようなベンチャー企業だと特にそうだと思います。社員は全員、幹部のようなものだと考えています」

売り場のお客さんから拾ったニーズをアイデアにして農家さんに伝える「マーケティング」、売れるものを農家さんと一緒に企画する「商品開発」、仕入れたものの魅力をお客さんに伝えて「販売」する。
その一連の流れは、商社の仕事と同じだと渋谷さんは話します。

「ビジネスとは、あくまでも手段です。手段の為に利益を上げるのではなく、営利と社会的ミッションを両立していることに、個人的には興味があります」

経営はスキルなので誰でも身につけていくことができる、とも渋谷さんは話します。
都市の中にたたずむ畑や里山ののどかなイメージに反して、実際の仕事には気持ちと体力が必要になります。「ビジネスの力で都市農業を盛り上げる」という理念に共感し、実現に向けて粘り強く取り組んできたいと考える人にとって、「エマリコくにたち」での活躍のフィールドは無限に広がっているのかもしれません。

都市農業を盛り上げる未来

渋谷さんは、「都市農業を支える、というのはおこがましいけれど」と前置きをして、「間接的にお手伝いができることは楽しいですね。市場の声を届けることで、農家さんがやりがいを感じてくれて、農家さんの声を届けることで、野菜を買うお客さんに喜んでもらえる。僕らは直接農家をやるわけではないけれど、そういう人も必要だと思う」と話します。

「まだまだ多摩地域だけでもやることがたくさんありますが、堅実に事業を拡大していって、将来的には都心へ進出する可能性も十分あります」
近い目標は、東京野菜を取り扱う時、東京の生産者のネットワークを持っている会社としてまずお声がかかるようになること。国立から始まるベンチャー企業が「東京の農家さんに一番近い会社」として都市農業を盛り上げていくのは、そう遠くない未来かもしれません。


Written by加藤 優/Yu Kato

「国立人」編集・ライター。歩いているだけでも楽しい国立のまちで、のびやかに働く人たちの話を聞くことが栄養になっています。

募集終了

募集主 株式会社エマリコくにたち
URL http://www.emalico.com/shunka/
勤務地

東京都国立市中1-1-1 ※7月以降、多摩市内の新店舗への配属になります。

地図

募集期間 2016.6.16 - 6.29
職種

新店舗の店長・幹部候補

雇用形態

正社員

仕事内容

7月上旬、多摩市内の商業施設内に新しくオープンする地場野菜の直売所の経営をお任せします。
副代表の渋谷とともに新店舗立ち上げに関わる業務を行い、オープン後は下記の店長業務を行っていただきます。

・商品の発注、管理
・野菜の陳列、値付け
・店舗管理
・接客対応
・アルバイトスタッフのマネジメント、指導
(スタッフは5~6人を予定)
・シフト管理
・広報、販促 など
店舗に関する業務はすべて、店長の仕事です。

幹部候補の方には、農家さん開拓、陳列の検討、販売商品の検討、販促、各種オペレーション策定など、店舗の立ち上げ・運営にかかわるさまざまな仕事にかかわっていただきます。

給与

月給20万円~(応相談)
※経験・能力を考慮し、面接・面談後に決定します。
※昇給あり。事業が軌道に乗れば昇給します。

待遇

社会保険制度、交通費全額支給、従業員割引あり

勤務時間

9:00~20:00(休憩あり、シフト制)

休日休暇

月6~8日

経験資格

スキルや能力は特に求めていません。熱意をもって、素直に、一生懸命取り組める方を求めます。
「ビジネスの力で都市農業を盛り上げ、都市に畑を残していく」というミッションに共感し、新しい店舗を自分の采配で動かしていくことに意欲のある方を歓迎しています。

求める人物像

・やる気と熱意と体力があること
・ビジネスに興味があること
・常に素直に、前向きにチャレンジができること

募集人数

1人

選考の流れ

まずは、「応募する」フォームから必要事項を記入の上、ご応募ください。

その他

新規店舗立ち上げにあたり、インターンシップ生も募集します。
新しいビジネスを立ち上げる貴重な経験ができます。

問い合わせ先

042-505-7315 担当:菱沼勇介

※こちらの求人募集は終了しました。ご応募ありがとうございました。