国立人 小さなまちの仕事さがしのびやかにはたらく人を大切にする国立(くにたち)エリアの求人サイトです。

はたらきかた 小商いをはじめる

和久 紗枝さん

のどかな里山風景が広がる谷保(やぼ)エリアで、地域の人が交流する場として開かれたスペース「やぼろじ」。和久さんはこの場所で、やぼろじ事務局やお兄さんの建築事務所「WAKUWORKS」を手伝いながら、北海道苫小牧市で駆除された鹿の角を使ったアクセサリー「YUKU」の制作や、草木の剪定材や間伐材などを活用した小物作り、子ども向けワークショップの企画などの小商いを行っています。

和久さんはアクセサリーメーカーのデザイナーを経て、港区のデザイン施設でコーディネーターの仕事に就いたのち、結婚を機に退職。長男が幼稚園にあがり、手が離れたのをきっかけに、自身のライフワークと向き合うようになったそう。

「これまで興味の赴くままに色々な事を行ってきたけれど、どれも中途半端になってしまっているのではないか、そんな思いも持っていました」
けれど、次第に「ジャンルに捉われず幅広く色々な事ができるのが私」だと考えるように。それから様々な人やものとの出会いをきっかけに、和久さんの活動の幅は広がっていきました。

素材の持つ魅力とストーリーを伝えたい

鹿の角を使ったアクセサリー「YUKU」は、アイヌ語で鹿を意味します。制作のきっかけは、長男と通っていた「森のようちえん」の自然体験教室で訪れた苫小牧での出会いでした。昔は森で人と共存して暮らしていた鹿が、現在は農作物に被害をもたらし駆除されている現実を教えられ、「これまで自分の好きなアクセサリーを制作し販売してきた経験を、森を守ることに生かしたい」と着想を得たといいます。

ごつごつした鹿の角、そのものの素材から受けたインスピレーションを活かした、ピアスやイヤリング、タックピンやヘアゴムは、普段使いしやすい自然な風合い。売り上げの1割は、苫小牧で森の保全活動を行う「苫東・和みの森運営協議会」に寄付されています。

「素材の魅力を最大限に引き出すものづくりで、その背景にあるストーリーを伝えたい」と和久さん。

「今取り組んでいる“くにたちさくら組”という活動では、寿命が近づき倒木のおそれがあるために伐採された、国立さくら通りや大学通りの木を譲ってもらい、ベンチや小物として再活用するワークショップを地域の方々や子どもたちと一緒に行っています。通常、伐採された桜の木は廃棄処分されてしまいます。街路樹としての役目を終えた桜が、形を変えて地域の中で再生活用される、1つの循環モデルをつくりたい。未来の子どもたちのために、身近な自然に目を向け、まちの自然環境を育むきっかけづくりに繋げたい」

小学生の頃から親しんでいた桜の並木道の記憶と、その素材から受けるインスピレーションは、和久さんの創作意欲の原動力になっています。

「知人のガーデナーさんから廃棄される前の剪定材を譲り受けて、リースなどを作るワークショップを開催する事もあります。まずは素材と出会い、その背景にあるストーリーとも繋がることで、生まれてくる感覚を大切にしていきたい」

ものづくりに使用するために素材を探すのではなく、素材の方から自然とやってきてくれる、と和久さんは話します。そのため、1つ1つの日々の出会いや、やぼろじに訪れる人との触れ合いがとても大切なのだそう。

小商いは、日々の活動のプレゼンテーション

「やぼろじは、建築事務所やカフェ、建築工房や、フリーランスのイラストレーター、ガーデナー、コミュニティデザイナーなど、様々な業種のメンバーと場所をシェアしています。月に1度、やぼろじの庭でメンバーがそれぞれの職能を活かしたモノを制作して販売したり、ワークショップを行う“やぼ市”というイベントを開催しています」

その日のやぼろじの庭先では、和久さんがコーディネートを手がける持ち運び可能な「モバイル屋台」が並び、やぼろじメンバーによる様々な小商いの様子を見ることができます。

「“やぼ市”のような小商いの場は、私たちの日々の仕事や活動の一部を皆さんにプレゼンテーションする場にもなっています」
小商いは、和久さんにとって活動の原点にも繋がる大切な機会なのだそう。

小商いから生まれる、新しい出会い

組み立てられたモバイル屋台は、商品を手に取るお客さんとほどよい距離感のとれる大きさ。和久さんはお客さんと顔を合わせて、インターネットやSNSでは伝えきれない素材の背景にあるストーリーを、直接言葉で伝えています。
「直接コミュニケーションを交わすことで、新たな発見や出会いに繋がることも。そこからまた新たなものづくりのヒントや、ストーリーが生まれるのが大きな楽しみです」

モバイル屋台は、女性1人でも持ち運びしやすく少ない労力で組み立てられるよう、何度も試作が重ねられました。素材には多摩産材が使われ、木のぬくもりをそのまま活かした加工からは和久さんのこだわりが伝わってきます。「この屋台すてきですね」と興味を持つお客さんも多いそう。

「小商いは、『誰でも』『1人で』始められるんです。それなら、私ができる事ってなんだろう、とじっくり考え向き合うきっかけになりました。私の場合は、ジャンルや大きさに捉われることなく、わくわくする素材やモノと出会ったとき、その背景にあるストーリーや魅力を、自分の手を動かして創り、伝えることだと気付かされました」

そう言って微笑む和久さんが今一番大切にしていることは、小商いを通した「出会い」なのだそう。1つ1つの自然な出会いから広がっていく活動の話を聞きながら、誰にでも新しいストーリーが始まるきっかけはすぐ近くにあるのだと感じました。

自然体でのびやかなまま、自分にできることは何かを考えていく。そのきっかけの1つが、小商いなのかもしれません。

やぼろじ
http://www.yabology.com/

やぼ市
https://www.facebook.com/yaboichi1/

モバイル屋台
https://www.facebook.com/mobileyatai/