ふじみな夜 第1話 ー米と土地とつながる夜編ー [コラム]

ふじみな夜 第1話 ー米と土地とつながる夜編ー [コラム]

2022年から国立の谷保で『やぼな夜』を過ごしてきた私たちですが、この春から新たに『ふじみな夜』をはじめることになりました。

国立駅から見て右手にのびる富士見通りを中心に、さまざまなお店で夜を過ごしていく予定です。乞うご期待ください!

cometen 国立米店

桜が美しかった4月頭、初めての『ふじみな夜』を過ごすべく、『cometen 国立米店』に集まりました。こちらのお店は、『やぼな夜』の取材を共にしてきた加藤優さんが2月にオープンしたお店です。

優さんと出会った頃から「いつかお米屋さんをやりたい。ただ米を売るだけではなく、米と米のまわりのライフスタイルを伝える活動をする場所にしたい」と話されており、農家さんへ直接会いに行って準備を進めてこられた過程もお聞きしていたので、優さんの夢が現実となりそのお店の中に居ることに、喜びと感動を覚えました。

飛騨にある森と米を知り、味わう

今夜のメンバーは、優さん、加藤さん、俳優の裕美ちゃんと私です。いつもは皆がお客さんとしてお店を訪れますが、初めて優さん、加藤さんがお店側の人として迎え入れてくださったことも新鮮でした。

白を基調とした素敵な店内には、優さんが出会った農家さんたちのお米や、お米をより美味しくいただくための調味料、ふりかけ、お漬物など、魅力的なものが並んでいます。また、たわわに実った立派な稲の穂や、その時POP-UPをしていた『飛騨の森と米』についてのパネルも飾られていて、今目の前にあるものがどのような風土で育ち、ここへやってきたのか、そのつながりを感じることができました。

裕美ちゃんと興奮しながら並んでいる商品を見ていると、優さんがひとつひとつの商品について丁寧に説明してくださいました。落葉広葉樹のお山には245種類もの植物が育ち、暮らしに「役」立つ「役草(やくそう)」と呼ばれていることや、様々な効用を持つ役草は、お茶や調味料として飛騨の方々の暮らしの中で親しまれているそうです。

販売されていた「5人の作り手による飛騨の米」についても、農家さんそれぞれが大切にしていることや、特徴などをわかりやすく教えてくださいました。どの商品も魅力的で全部欲しくなってしまうので、高ぶる気持ちを落ち着かせるため、一旦カウンターへ着席しました。

今夜は米屋の日本酒バー

この日は不定期で開催されている日本酒バーの日で、飛騨の新酒、秋田の新酒などがお米とともに勢ぞろいしていました。

カウンターに座っても、より気持ちが高ぶるばかりです。私も裕美ちゃんも『3種飲み比べ 1.飛騨の日常』を注文しました。『蓬莱』と『白真弓』は飛騨でよく飲まれているお酒だそうで、『白真弓』はあまり他地域に出回らないのだそう。私たちの他にもお客様が来店され、同じカウンターで日本酒を楽しんでいらっしゃいます。

日本酒と、これから販売する予定の南魚沼産コシヒカリ、大根と菊芋のお漬物が素敵な器に並んで出てきました。

まずはお米からいただきます!

味が濃くて、噛めば噛むほど甘みが増し、お米だけでもどんどん食べ進めたくなる美味しさ。梅干しは、とても懐かしい味がしました。飛騨の農家さんが作っているもので、完熟した実を塩だけでつけているのだそうです。私の曽祖父は飛騨の出身だったこともあり、会ったことのない岐阜の親族から、梅干しや菊芋がよく届いていていたことを思い出しました。小さい頃食べた味に出会い直した夜。

お米と梅で喜んだ喉に、お腹に、日本酒を流し込みます。まずは『蓬莱 しぼりたて新酒』から。甘みがあり、とても美味! 喉越し滑らかで、いい香り。久しぶりに日本酒を飲んだので、早めに酔っ払ってしまいそうな予感を抱きながら、次は飛騨の方々が日常的に飲んでいるという『白真弓 上撰』をいただきました。こちらはキリッ、さっぱり、少し辛口な味わいです。

箸休めに大根と菊芋のお漬物をいただきましたが、本当に日本酒によく合います。飛騨の水で作られたお酒には、やっぱりその土地で作られた梅や漬物が合うのです。巡る、繋がる、そういうことを味から体感した瞬間でした。本来なら飛騨へ行かないと味わうことができないその体感を、国立で感じられたことに感謝です。3種目の『蓬莱 新酒一番にごり』はとても濃厚で、若干のヨーグルト感を感じたくらいです(※個人的感想です)。

お米と土地とつながる夜

『cometen 国立米店』で取り扱っている『nucca-ke』さんの米ぬかふりかけを味見させていただきました! ナンプラー、カレー、梅茶漬け、ジャコ塩昆布、豆板醤と種類も豊富で、どれも美味しかったですが、私は特に豆板醤に心惹かれました。

久しぶりに会った取材メンバーは、それぞれの近況報告をしながら楽しい夜が続きます。お隣に座っていたお客様ともお話しさせていただきました。新潟のご出身だというAさんは、よく富士見通りにある様々なお店に飲みに行かれるとのことで、いろんな情報を教えていただきました。

また、お話しは地域の美味しいもの、お酒の話に。新潟県村上市や、佐渡島、佐渡島の近くにある小さな島、粟島もおすすめだよ! と教えてくださいました。

初めましての方と、どこかへ旅したような気持ちに。

私たちの生活にお米はなくてはならないものです。でも私は時々、忙しさにかまけて「お米を味わう」ということを忘れてしまうことがあるな、と『cometen 国立米店』で過ごして思いました。改めて、お米とお米をとりまく色々なものやことと向き合う時間をもらったことで、自分と出会い直すような感覚もあったし、それらは自分を、からだを大切にしていくことでもあると思いました。

美味しいお米やお酒に加え、ここまでの時間やここではない場・土地の誰かの物語を含む体験を、ごちそうさまでした!

富士見ならぬ“不死身”なからだ・こころに近づくべく、『ふじみな夜』第2夜へつづく。

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「ふじみな夜」とは

「富士見通りのディープな店」を探るべく、ふじみな夜を過ごします。

木村 玲奈 木村 玲奈

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