国立駅から伸びる3つのメインストリートの一つ、「富士見通り」。
晴れた日には道の先に富士山が見えることから名付けられた通りは、焼き菓子店、花店、雑貨店、バーなど、個性豊かな個人店が軒を連ねているのが魅力。一方で、コロナ禍を経て、シャッターを降ろした空き物件が目立ち始めていました。
そんな富士見通りで、ガラス張りの三角形の空き店舗を活用した“シェアする”コンビニがスタートしようとしています。
※2023年春のオープンに向けて、2022年12月15日までクラウドファンディング実施中。
「コンビニ」と聞けば、まず思い浮かぶのは大手のコンビニ。全国どこにでもあり、商品構成やサービス、見た目もほとんど同じだからこそ、安心して気軽に利用できる地域のインフラ的存在でもあります。
「コンビニは、目的があってもなくても入りやすく出やすい、誰にでも開かれた存在だと思う」
「ほどよくドライで気楽なまちのインフラとしてのコンビニを、運営や企画にも“参加できるコンビニ”にして、画一的ではない地域性が生まれると面白くなりそう」
「お客さんが地域の人なのはもちろん、『この街で商いをはじめたい』『新たな販路を生み出したい』『この街の人の雰囲気を知りたい』という地域の人と一緒に、運営や商品の供給・セレクトができると、そこにしかない唯一無二のコンビニができそう」
そんな風に、『みんなのコンビニ』のアイデアは、みんなのコンビニ制作チーム3名のトークセッションの中で生まれました(アーカイブはSNS等で発信される予定)。発起人は、シェア商店『富士見台トンネル』を運営する、JUNPEI NOUSAKU ARTCHITECTS代表の能作淳平さん。そしてプロジェクトをともにするのは、本と街をテーマに活動するコミュニティスペース『国立本店』や求人サイト『国立人』を運営する、合同会社三画舎代表の加藤健介さん、自宅兼事務所スペースでコーヒースタンド『Around Architecture Coffee』を運営する、株式会社アラウンドアーキテクチャー代表の佐竹雄太さんです。
それぞれ地域に開かれた場所を運営している3名は、建築、まちづくり、不動産といった異なる分野の専門家でもあり、「地域で何かを始めたい」人の困りごとに多角的な視点から応えることができます。
「お菓子を買いに来たら、面白そうな本を買っていた」ように、「コーヒーを飲みに来たら、帰りにお米を買っていた」「お店番の人に会いに来て、話しているうちに仕事を見つけた」「買い物をしに来たら、棚を借りて商いを始めることになった」など、目的が後から見つかることもあるかもしれません。
気軽に出入りするうちに、自分が本当に求めていたもの・ことを見つけたり、本当にやりたい何かを見つけたり。そうやって地域の人たちでシェアして育て合うコンビニが、『みんなのコンビニ』です。
『みんなのコンビニ』では、出店者およそ50名で棚をシェアします。
シェア棚は「誰もがどこかで見たことがある」ような、コンビニを想起させる棚をリデザインした木製のもの。出店者は低コストで商いにチャレンジすることができ、持ち回りのお店番を通して地域の人との接点も持てるなど、コンビニの周辺エリアのテストマーケティングにもつながります。
そして、コンビニを運営していくことで、売れ筋商品や季節による変化、地域の特性など、商いのノウハウが蓄積されていきます。そうやって蓄積されたノウハウは、オンライン上のコミュニティ『みんなのコンビニバックヤード』で共有されていきます。棚を借りていなくても、みんなのコンビニに共感する人、応援したい人なら誰でも参加することができ、定例会や交流会への参加、オンラインショップへの参加、売り上げ分析の閲覧、独立・物件探し・設備・デザイン・求人といったお店づくりの相談など、気軽な交流がひろがることを目指しています。
『みんなのコンビニ』が目指すのは、まちの人のチャレンジを応援する「入口」を作ること。1号店だけでなく2号店、3号店へと展開していく方法も、一方的なフランチャイズ契約ではなく、人や店舗同士の交流、ノウハウの共有による「コミュニティ型」の仕組みを作っています。
そうしているうちに、『みんなのコンビニ1号店』で商いに挑戦して地域に愛着を持った人が、富士見通りのシャッターを開けてお店を構える、そんな光景も各地で見られるようになっていくかもしれません。
少子高齢化の今、空き店舗が増え、高度経済成長期に見られたかつての賑わいが失われつつある地域は増えています。『みんなのコンビニ』を介してまちに降ろされたシャッターが開き、その土地にしかないチャレンジが芽吹いていけば、昔とは違う新しい形の賑わいが、また地域に取り戻されていくのかもしれません。
東京都国立市西2-20-10