国立の氏神さまは、国立駅から徒歩30分、谷保駅から徒歩4分の場所に位置する『谷保天満宮』に祀られています。
『谷保天満宮』のことを国立人編集部では「やほてん」と呼び、親しんでいます。
天満宮は天神さま(菅原道真)を祭神とする神社です。
西暦903年に菅原道眞が亡くなった際に、子息により祀られたのがはじまりだと言われており、実は創建から1000年以上の歴史を持ちます。
西暦903年と聞いてもあまりイメージは浮かびませんが、『竹取物語』が完成したのはこのくらいの頃だそう。
ある日、「やほてん」からおよそ1キロメートル南にある『日新神社』の境内に、「谷保天満宮発祥之地」と刻まれた石碑を見つけました。
現在の谷保天満宮は、1181年にこの発祥の地から現在の地へ移遷したことがはじまりなのだとか。
1181年といえば、『平家物語』で平清盛が没した年です。
ところで「きわめて野暮なこと」を意味する「野暮天(やぼてん)」という言葉があります。
これは「谷保天満宮が語源」だと言われているそうです。
ちなみに「やほてん」の最寄駅は「谷保(やほ)駅」ですが、駅ができる前の谷保天満宮の呼び名は「“やほ”天満宮」ではなく「“やぼ”天満宮」だったそう。
野暮は「洗練されていない」「田舎」という意味があり、江戸時代の「粋(いき)」とは真逆の意味を持ちます。
昔の谷保地域がどれほど田舎だったのかは、会社や住宅の狭間に残るママ下湧水や矢川おんだしといった湧水、武蔵野の原生林、畑や田んぼののどかな風景からも容易に思い浮かべることができます。
それほど、かつての面影が守られて、残されているんですね。
江戸時代の都会的な洗練とは真逆をいっていたであろう「やぼ」。
やぼだからこそ、令和の今も心癒される自然が残されていることに感謝しながら、また「やほてん」を訪ねてみようと思います。
(編集・ライター 加藤優)