本当のイタリアを伝えたい

本当のイタリアを伝えたい

国立のメインストリート「大学通り」から路地に入ると、レンガの壁にイタリアの旗が見え、そこから広がるちょっとした広場に歩を進めると一番奥まった場所にそのお店は佇んでいます。

「リストランテ 国立文流」は、「イタリアと日本の食の文化交流」を目指し、1996年にこの地にオープンしました。

もともとイタリア書籍の輸入販売をしていた「株式会社文流」会長の西村 暢夫さんがイタリア各地を回るなかで各地方のイタリア料理に触れ、文化紹介をするには「食の紹介も欠かせない」との使命感にかられ、リストランテを1973年に高田馬場、次いで国立にオープンしました。

トスカーナ州の中世の町・ルッカにあるプロ養成の料理学校「ルッカ・イタリア料理学院」の設立にも深い関わりを持つ文流。長年、提携関係にあり、州に数人しかいないという「マエストロ」の認定を受けた校長先生、ジャンルーカ・パルディーニさんが年に1~2度、文流を訪れ、腕をふるいます。その際には常連客や学校の卒業生などのシェフたちが日本中から集うそう。

世界中からシェフ志望者が集まるというこの学校で、「リストランテ 国立文流」シェフの森庸之介さんも20代前半の1年半、修業した一人。

「ジャンルーカさんは家庭料理が根底に流れる『素材そのもの』を大切にした『本当のイタリア料理』を大切にしています。日本流にカスタマイズされたものではなく、『イタリアでこういうものを食べている』ものを日本で伝えていくのが私たちの務めだと思っています」森さんは、そう思いを語ります。

パスタ料理はいろいろな場所で食べることができます。でも、文流のパスタは素材の味が生きた深みのある濃厚なソースに麺が絶妙に絡み、「本当に美味しい」といつも思っていました。「本物」を感じながらも何気なく食べていたパスタには、本場の味と、それを伝えようと心を尽くす両国のシェフの思いが生きていることを知り、秘密に出会ったような気がしました。

※2017年3月時点の「リストランテ国立文流」の記事です。

もくじ

イタリア料理のおもしろさを伝えたい

「時代と共に『志を高く料理人を目指す』という人より『安定を求め手に職を』という人が増えている実感があり、私が始めた頃の志のようなものが通じないことも多い。新しく入られる方が『よし、やってやろう!』と思えるようなアレンジを私たちがしていかないといけないと思っています」と森さん。

イタリアで得たレシピで作ってみると「よく考えて作られているな」と改めて気づかされ「遺跡を発掘しているような気持ちになる」のだそう。「新しい人には『単純なレシピの再現ではなくレシピや調理の工程の意味合いを一つひとつ考えて』と伝えています。パスタの素材配合や具とのバランスなど『なぜこうなっているのだろう?』と考えるとすごくおもしろい」

レシピは伝統的に続くものやジャンルーカさんが伝えるものがベース。「『国立店のお客さんがどういう料理を食べたいか?』と考えてアレンジするのはめちゃめちゃおもしろい。自分の考えがお客さんの好みと一致していくと『うわあ』と感動です。その楽しさを若い人に伝えたい」と熱く語ります。

「イタリアに行き人生観が大きく変わりました。イタリア人は『やるときはやる、やらない時はやらない』の使い分けがすごく、今でも教訓として残っています」

「身体的にしんどいこともあるなかで、嫌にならないのは『好きだから』ですね。自分の仕事に満足しているんです。この仕事に就けていてラッキーと感じています」と笑って言ってのける森さんの話を聞いていると、イタリア料理の魅力を垣間見た気がしました。

上質だけど親しみやすいサービスで、寛ぎの場をつくりだす

リストランテ国立文流

キッチンスタッフは3人。体育会系出身で体力にも自信がある5年目、20代の宮本さんは開業を目指し修業中。「料理も一から丁寧に教えてくれるしわかりやすい。失敗を恐れずどんどん挑戦していくことが大切だと思っています」と話します。

お店は現在、20~30代のスタッフが運営しています。店長の廣田隆治さんは学生の時からアルバイトとしてここで働いていて、店長や料理長など年齢も立場もバラバラのスタッフ皆で美味しい料理を囲んでのまかないの時間がとても心地良かったそう。

家族そろって食事をする楽しさとも通じる和気あいあいとした空気感。「これがイタリア料理の本質だろうか?」と感じていた思いは、イタリアに直接、足を踏み入れたことで確信に変わったと言います。

「イタリアのおもてなしは押しつけがましくないけれど『心から楽しんで美味しい料理を食べてほしい』と常に気にかけてくれ、まっすぐで心地いい。自分が感じた『心地のいい場』をつくるお手伝いがしたいという思いが強くなり社員になりました」

アルバイト時代や入社当初は怒られることもあったそうですが、「どんなに怒られても自分がよくなるためのチャンスと捉え、負けないぞというモチベーションにつながったのは、怒られてもすぐに切り替えてまた皆で頑張ろうという雰囲気だったおかげ」と振り返ります。

入社して8年ほど経った2008年頃から店長に。「お客さまの数だけニーズがあるので、お客さまの顔を見ると『この方はどういう風に楽しみたいのか?』興味が湧く」と話す廣田さんの「おもてなしの心」に感心します。店長として「わからないことは何でも説明するので、お客さまには構えずに心から寛いでいただき、家にいるような安心感を持っていただきながら、それでいてレストランという場をつくりたい」と思いを込めます。

国立の人を引きつけてやまないレストラン

廣田さんと森さんの関係はバイト時代から20年ほど続き「言いたいことを言い合い、お互いどういう考えかわかり合っています」と目を合わせ笑います。

オープンキッチンという構造的なこともあり、キッチンとホールの垣根はなく「比較的、和気あいあいとしていると思う」とお二人。廣田さんが心地いいと感じた「風通しの良さ」は今も続いているのだと感じました。ガラス張りで日差しが降り注ぐ明るい店内で働くことは「働いている側にとっても気持ちいい。この開放的な空間がスタッフやお客さんとの距離を縮める一つの要素」とも。

廣田さんは「ホールで新しく入られる方は、最初は何もできなくてもいい。料理や食べること、ここで働くことに対して何か一つ好きな要素があるとよりいいかもしれませんが。わからないところはわからないと言ってほしい。自分の中で溜まってしまうと楽しいところにも気づかず苦しくなってしまう。ポジティブな人、いい意味で馬鹿な人も大歓迎です」

「ホールもキッチンも好奇心が大事。興味を持つことに貪欲に。携わっていることに関して責任が発生すればするほど自分で知識を身につけていこうと思える意識を持てる人がいいですね。元気と勇気が持ち物です」と話すのは森さん。心を込めたイタリア料理をサーブしてもらうために「メニューの書き方一つにしても、お客様の目線でわかりやすく伝えてほしいです」

長く国立の街に愛され常連客も多い「リストランテ 国立文流」。国立の人を引きつけてやまないその魅力は、「本当のイタリア料理」と「上質であるけれど親しみやすいこまやかなサービス」を実践するスタッフの思いなのだと感じました。

優雅な空間をつくりだすスタッフは、てきぱきとした動きに加え、しっかりした身なりや言葉遣いなどそれなりにわきまえることも必要になると思いますが、「きちんとした接客に挑戦してみたい」「本当のイタリア料理が作りたい」「イタリアが気になる」という思いがある人は、このお店でぴったりな仕事と出会えます。

店舗情報

店舗名
リストランテ国立文流
HP
https://www.bunryu.co.jp/cont/restaurant.html
問い合わせ
042-571-5552 k-ristorante@bunryu.co.jp

東京都国立市東1-6-30 パティオマグノリア1F

堀内 まりえ 堀内 まりえ

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