国立駅から見て右手にのびる富士見通りを中心に、さまざまなお店で夜を過ごすべく始まった『ふじみな夜』。
姉妹コラム『やぼな夜』では、お店の店主や、居合わせたお客さんに「谷保ってどんな場所ですか?」とお決まりの質問を投げかけています。『ふじみな夜』ではいかに?
さっそく2夜目を過ごすべく、取材チームは国立駅に集まりました。
「今日はどんなもの食べたい気分?」などと話しながら、みんなで富士見通りを歩いていくと国立市公民館が見えてきました。私は公民館の建物が好きなので立ち止まってその話をしていたら、すぐそばに『おさかな なかいち』の看板を発見! 今夜はこちらで夜を過ごすことに。
中に入ると、靴を脱いで上がるお座敷へ通されました。個室なのでプライバシーも守られるし、家のお部屋のような安心感もあり落ち着きます。入り口に近いお座敷だったこともあり、窓の外には富士見通りが見えました。
飲み物メニューを見ると、ウイスキー、ワイン、ジン、焼酎、サワー、カクテルとたくさんの品揃えがあるほか、日本酒メニューも充実していました。まずは、生ビール、トマトサワー、シャンディガフ、そして刺身盛り合わせを注文しました。裕美ちゃんと岩中さんは初めましてだったこともあり簡単な自己紹介をしていたら、ほどなくしてお酒とお通し、刺身の盛り合わせが運ばれてきました。
乾杯!!! (乾杯って、なんでこんなに嬉しいんでしょうか)
ビールを流し込み、お通しをいただきます。青菜のおひたしとお魚のカルパッチョ (シマアジ)。青菜のおひたしは美しい緑色で味が濃く、絶妙な茹で加減で素材の味が楽しめました。カルパッチョのシマアジも弾力があって美味しかったです。
お刺身が本当に美しくて、視覚からも幸せを感じられました。盛り合わせの内容は、サワラ、ブリ、タイ、サザエ、サザエの肝です。サワラはあぶらがのっていますがさっぱりしていて美味。ブリはしっかり弾力があり、あぶらが甘い感じがしました。タイは味が濃く風味が口に残ります。サザエは歯ごたえがあり、海の味がしました。サザエの肝を食べた裕美ちゃんと岩中さんは、臭みや苦味もなく、お味噌みたいなコッテリ感で美味しい! と興奮していました。
今回のメンバーは、いつもの取材チームと俳優の裕美ちゃん、アートマネージャーの岩中可南子さんも一緒です。
岩中さんとは、「放課後ダイバーシティダンス」(国立市・港区・日の出町の3つのエリアで実施) というダンスプロジェクトで出会い、その後もダンスのお仕事でお世話になってきたのですが、4月に『BONUS TRACK』で開催された企画『WORK / LIFE MEETING 働くと暮らしを考える』で国立人編集部の加藤健介さんとトークされたご縁もあり、ふじみな夜に参加してくれました。
岩中さんが今回、初参加ということもあり、加藤さんや私、裕美ちゃんがどのように国立に出会ったのか、という話になりました。
岩中さん以外の3人は、国立駅前のコミュニティスペース『国立本店』を運営する『ほんとまち編集室』のメンバーでした。それぞれ参加したタイミングは違うものの、『国立本店』に惹かれてメンバーになったことからつながっています。おそるべし、『国立本店』!
『国立本店』は20年近く前にできた場所で、最初はデザイナーや建築家の事務所のようにして使われていましたが、途中から『ほんとまち編集室』のメンバーが日替わりでお店番をする今のスタイルに切り替わり、そのタイミングで加藤さんが室長になったそうです。メンバーは毎年入れ替わっていて、卒業したり、新しい出会いがあったり……少しずつ変化しながら、『国立本店』は続いてきました。
私はこれまで15年ほど、ダンスの仕事で様々な土地に滞在し、身を置いてきました。滞在は長くて1年、短いもので5日間と期間は色々でしたが、常に訪ね人として土地に身を置かせてもらい、出会う人と時間を過ごさせていただきました。その中でずっと感じてきたのは、「土地が人を呼んでいる / 呼び寄せている」ということです。どこでどのように生きていくのかは、それぞれの選択に委ねられていますが、これまで訪れた土地には、元々はその土地の人ではないけれど、移住したり、家族を持ったり、選択したり、流れにのったりしながら、暮らしている人々がたくさんいました。
そういう人々の暮らしや生き方を感じる度に私は、「〇〇さんはこの土地に呼ばれていたんだなー」と思うのでした。「呼ばれる」を言い換えるとしたら、「土地に必要とされている」とでもいうのでしょうか。そんなことを『国立本店』や加藤さんのエピソードから感じました。
話に華が咲いていると、追加で注文した 本マグロレアカツ、クリームチーズ茶碗蒸し、モツ煮が到着しました。
揚げたてを食べよう! ということで、さっそく 熱々の本マグロレアカツをいただきました。外はサクサク、中はレア、ホロホロと口の中で溶けます。最高に美味しく、お肉のようでした。クリームチーズ茶碗蒸しは店頭でメニューを見た時から皆気になっていたのですが、お出汁のきいた卵にクリームチーズは合う、ということがわかりました。モツ煮は味噌味でクセがなく、一緒に煮込まれていたお豆腐も美味しくてお酒が進む味です。
続けて、季節限定の『大盃 マッチョ 純米酒』を注文。ちょっと酸味がありなんだかメロンのような味がして、個人的にはとても好きでした。
お酒が到着し、改めて乾杯!!!(何回 乾杯しても嬉しい)
サケハラミ西京焼き、長いもポテト、タイしゃぶも届きました。
サケハラミ西京焼きはあぶらが乗っていて口に入れると身がとろけます。美味すぎる。長いもポテトは軽めの衣でサクッと挙げられていて一度食べると手が止まらなくなる感じです。
そしてタイしゃぶは、女将さんらしき女性がセッティングしてくださったそのお鍋に一同驚き! 火はIHなのですが、そこに竹籠を置き、その中に紙が入っていて、紙の中にお出汁が注がれています。お話しを聞いたら、紙の下に発熱板が仕込まれているのでお出汁に熱が通るとのこと。見た目も美しいだけでなく衛生的で、素晴らしい!
タイしゃぶの〆に女将さんが雑炊を作ってくださり、皆でいただきました。タイやお野菜の旨みが残ったお出汁、ふわふわの卵、ネギ、最高の組み合わせです。お腹も心も満たされました。
最後に大将と女将さんとお話しできたので、聞いてみました。
「富士山、お好きですか?」
大将と女将さんは八王子で暮らしており、「そこまで富士山にこだわりは、正直ない……」そうです。しかし、「富士見通りからは、ちゃんと富士山が見えますよ! 晴れた日はすごく綺麗に見えるし、訪ねてくださるお客様にとっても、富士山は大切で印象深いものだと思います。ここにはいろんな場所からお客さんが来てくださるので、富士山が綺麗に見える日は嬉しいですね」と答えてくださいました。
お話ししていたら、大将と女将さんは『ふじみな夜』第1話で訪れた『cometen 国立米店』が気になっていたそうで、富士見通りのお店同士が繋がった瞬間でもありました。
人は、人や場と偶然的に、直感的に、出会っていくのかもしれませんね。そして導かれていく。
そんなことを考えた『ふじみな夜』2夜目でした。
国立という土地に呼ばれている、呼び寄せられている者として、これからも素敵なお店や人と出会い続けていきたいです。『ふじみな夜』第3夜へつづく。
(取材 木村玲奈 / 編集 国立人編集部)
「富士見通りのディープな店」を探るべく、ふじみな夜を過ごします。