「国立の春の風物詩といえば?」
道行く人に尋ねれば、必ず「大学通りの桜」と返ってくる。そんな気がするほど、南北に伸びる大学通りの桜並木の風景は、国立に暮らす人々の記憶の中に根ざしているように感じられます。
けれども、実際に国立に暮らしてみると、あることに気がつきました。
国立には、大学通り以外にも、桜の木がとても多いのです。
国立の南側には、住宅街を横断するようにJR南武線が走り、「谷保駅」と「矢川駅」というふたつの駅があります。
私の家は、国立駅と矢川駅のちょうど中間地点にあるのですが、この矢川駅へ向かうためには、大学通りと交差して東西に伸びる「さくら通り」を使います。
さくら通りは、その名の通りみごとな桜の並木道。そこから矢川駅へ向かう通りにも桜並木が連なり、まったく途切れることがないのです。大学通りを南へ下った先にある谷保駅へも、同じく桜並木が続いています。
上京するまで暮らしていた地元にも「お花見スポット」と呼ばれる場所はありましたが、川沿いに連なる桜並木はせいぜい100メートルほど。国立では、国立駅から矢川駅までのおよそ3キロメートルにもわたって桜並木が続いているのです。
どこへ行っても、うららかな桜色が目に入る。これまでの人生で、これほど日常風景の中に桜が咲き誇っている街で暮らしたことはありませんでした。
駅や仕事先へ向かうとき、スーパーへ日々の買い物に行くとき、カフェでちょっとお茶をするとき。日常になじむように咲いている桜を眺めては、仕事や用事のついでにお花見も堪能したような、ちょっとお得な気分になります。
日々の暮らしのなかで、さりげなく季節の移ろいを感じられるのが、国立暮らしのいいところなのかもしれません。
(書き手:加藤優/国立暮らし1年目)
外から見たときと、内側から見たときのイメージは少し違います。そんな『国立暮らし1年目』だからこそ見えてくるものを綴るコラムです。