昭和44年創業。大手企業の高いレベルの保管配送における品質基準を満たしながら、小さなネットショップ通販の物流も手がける『国立倉庫株式会社』。
いま、地域の垣根を越えて、全国から発送案件の受託を受けている老舗企業の歴史は、国立倉庫本社の米蔵から始まったといいます。
「現在の社屋の後ろに見えるのが、かつて米蔵だった倉庫です。昔はパレットなどの物流機器がなかったので、米袋の積み下ろしは人力で行っていたそうですよ。今は定温倉庫の機能を活かし、家財を大切に保管するトランクルームとして活用しています」
すぐそばに国立・府中インターチェンジが開通し、ここが物流の拠点になる事を見越して、倉庫会社を立ち上げた先代社長・三田正治氏。
「その“先見の明”の恩恵を受けながら、貴重なこの立地で物流を手掛ける者の社会的使命と責任を常に感じながら、仕事に取り組ませていただいています」と、大切そうに会社の歴史を語ってくれたのは、三田正治氏の孫にあたる三田朋之さん。
国立への地域貢献を大切にしながら、安定した経営を手がける現社長の三田友一氏。三田朋之さんはその意志を継ぎながら、小さなネットショップの注文受付から在庫管理、発送管理までを行う新しいネット通販物流サービス「kunilogi.net(クニロジ・ネット)」を創り出し、いま、その事業は大きな機運を生んでいます。
小さな規模(月10件程度)から、大きな規模(月千件以上)まで、精度が高くきめ細かな物流対応ができるサービス。それが、ネット通販物流サービス「kunilogi.net(クニロジ・ネット)」です。
たとえば、個人経営の小さなお店ではじめたネット通販が軌道に乗ったとき。注文が増えて梱包・発送作業が追いつかなくなったり、在庫管理をするのが大変で、せっかく注文があったのに品切れになっていたり……そんな困りごとをよく聞きます。
kunilogi.net(クニロジ・ネット)では、注文が入ってから出荷されるまでの倉庫内の状況を独自のデータベースで管理し、お店側は入荷から出荷までの状況をリアルタイムで見ることが可能。季節による注文数の変化や人気商品など、マーケティングに活かせるデータも収集できます。
また、長年培われてきた物流倉庫のノウハウが、商品を傷つけない丁寧な梱包と手早い発送に活かされ、時節やシーンに合わせたギフトラッピングの要望にも丁寧に対応してくれると好評です。
個人で多種多様なお店や事業をはじめやすい時代だからこそ、「小規模なモノの動きにも対応できるサービスが大切」だと、三田さんは考えているのです。
大切にしているのは、お客様目線のサービス。
お客様にとって、小さな規模からでもキメの細かな物流サービスを受けられることは喜ばしいこと。しかし、それは倉庫会社の古い考え方から脱却することでもありました。
「お客様が売れなくて困っている商品を、倉庫会社が保管しているような関係の作り方では絶対ダメで、お客様と共に商売を育み、歩む中でサービスを創っていくことが大切なんだ、と考えるようになりました」と、三田さんは話します。
三田さんが以前から気になっていたという「倉庫業におけるお客様との利益相反の矛盾」を根本から見直し、サービスを刷新するきっかけとなったのは、2008年に起こった“リーマンショック”でした。
「景気に陰りが出て、それまで大きな売り上げを得ていた荷主企業が事業を縮小したんです。その煽りを受け、うちの倉庫も一気に2000坪位空いてしまいました。従業員もたくさんいましたので、皆が安心して働ける現場を作り出して、倉庫を埋めるために、一刻も早く活用方法を見出さなければいけませんでした」
頭を悩ませたのは、その企業向けに造られた7階建ての倉庫。階数があるので、保管するためには何度もエレベーターを往復させなければならず、普通の倉庫として使うには人手が掛かり、デメリットが大きかったのです。
その課題を解決する策として、三田さんが細々と進めていた個人向けのネット通販物流サービスが合致しました。個人向けの荷物は、企業向けに比べてひとつひとつ梱包サイズが小さいため、日々荷物を下ろす際のデメリットが発生しにくかったのです。
「結果として、企業向けの物流サービス(BtoB)から個人宅配向け(BtoC)の物流サービスへ、大きく業務内容が切り替わるきっかけとなりました。数件の取引先からはじまり、地道に実直に1坪~10坪位のお客様を増やしていくことで、スカスカになっていた倉庫を荷物で埋めつくすことができたのです」
2017年には埼玉にも拠点を増やし、さらなる展開も考えています。
「少しずつ規模を拡大していくお客様もいれば、様々な理由から撤退されるお客様もいます。けれども、以前の様に2000坪単位の倉庫が一気に空いてしまうリスクはありませんし、ありがたいことにお客様は増え続けています」
規模は小さくても、小さなお客様を集めることで結果として安定した倉庫運営に繫がる。まさに“小は大を兼ねる”逆転の発想です。
「もともと、大手企業の細かなニーズに対応できるような質の高いスタッフの体制は整っていました。面倒なことをいとわず、良質なサービスを目指して工夫する。そういう土壌は、スタッフひとりひとりが作り上げてきたものです」
三田さんの言葉に、ネット通販物流サービス担当であり、梱包スタッフのまとめ役でもある和気さんは頷きます。
「いつも届け先の気持ちを考えて、正しく綺麗に梱包された商品を発送するため、自己流ではなく基本を大切にしています。もしかしたら、お預かりしているのは大切な贈り物かもしれません。梱包にミスがあるとがっかりさせてしまいますし、クレームにもつながってしまいます。その基礎をしっかり身につけるため、ラッピングコーディネーターの資格も取得しました」
商品を大切に扱う基本から、シーンに合わせたラッピングの知識まで、スタッフ間で共有しているそうです。
「私は、お客様と電話でやりとりすることも多いのですが、ネット通販は初めてのお客様が多いので、ウェブ上のシステムの見方から、ラッピングのご相談まで幅広く相談に乗っています。手数の多すぎるラッピングはお受けできないのですが、具体的なイメージを聞いて、実現可能な範囲でお応えするようにしています」
従来の倉庫内作業の印象といえば、暗い中での黙々作業。ですが、ネット通販物流サービスの倉庫はその印象を覆すほど、明るく綺麗です。
「確かに、倉庫会社の仕事風景って外からまったく見えないですよね。私自身も、まずは会社を見学して、現場の仕事風景や雰囲気を見てから、ここで働こうと決めました。この会社は10年以上働いている人が多く、役職に関係なく距離が近くて、気軽に声をかけやすいので居心地がいいんです。今の仕事も、一番私に向いている仕事だな、と感じています!」
“ネット通販の裏側ってどんなだろう”という興味から働き始めて、もう5年以上になる和気さん。仕事を心から楽しんでいる彼女と話していると、こちらまで明るい気持ちになります。もしかしたら、和気さんと電話で話をしているお客さんも、同じ気持ちなのかもしれません。
「時代の移り変わりを肌で感じることができるのが、ネット通販物流サービスのおもしろいところです」
仕事を通して、見たこともない海外の輸入商品に出会ったり、最先端のファッションや食材を知ったり。それは、ネット通販を始めるお客様がキャッチしている時代の流れそのもの。
三田さんをはじめとする営業スタッフは、そんなお客様と出会い、売れ行きを通して時代の流れをダイレクトに実感して、日々刺激を受けています。「ニッチな商材を新しい切り口で販売して大成功を収めた」エピソードなど、一人一人のお客様が物語を持っているのです。
「“小は大を兼ねる”でも触れましたが、大切なのは、お客様と倉庫会社が同じ方向を向いていること。お客様の発展が、国立倉庫株式会社の発展にもつながる、そんなサービスであり続けたいと思っています」
人と倉庫の新しい未来を見据えた、ネット通販物流サービス。
「これからは、荷主様がより便利に使えて、コストダウンに繫がるような受発注の自動連携や、『ネット通販物流をはじめたいけれど、始め方がわからない』という倉庫会社に向けた、システム販売なども行っていきたい」
そう話す三田さんの“先見の明”は、多くの人々にとってよりよい仕事や人生への一助となってくれそうです。
東京都国立市谷保6-22-1