やぼな夜 第11話 ー谷保で巡りめぐる縁編ー [コラム]

やぼな夜 第11話 ー谷保で巡りめぐる縁編ー [コラム]

2024年も残すところ数日となった師走、取材チームは谷保駅に集結しました。この日はいつもの取材メンバーに加えて、国立駅前のコミュニティスペース『国立本店』つながりで、俳優のひろみちゃんと同じ青森出身の大学生のましろさんも一緒です。

いつもの通り話しながらあてもなく歩き始めると、やぼな夜第1話で伺った『旅路』さんが閉店していることを知りました。アイコさんの「どぜう揚げ」がもう食べられないと思うと寂しい気持ちになりましたが、一度でも旅路さんに身を置いて、美味しいお酒、お料理、そしてカップラーメンを食べることができたことを喜ぼう、と思いました。一期一会ですね。アイコさん、どうぞお元気で。

肴処 えん

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年末ということもあり、駅前のお店は満席や貸切の状態が続き、駅からは少し歩くけれど以前から調べていて気になっていたお店『肴処(さかなどころ) えん』さんへ向かいました。たどり着くと、「ここにあったのか〜」という若干の隠れ家感。看板には◯(えん)が描かれています。

この師走に予約なしで5人入れるのかと心配していましたが、なんと常連さんらしき方々が席を移動してくださり、奇跡的に入ることができました! この時、移動してくださった皆様、ありがとうございました。

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入ってすぐのテーブル席に着席すると、仕切り壁の上部に素敵な半円形の木の扉が見えて、「なんだか素敵な扉だねー」とみんなで話していました。奥には素敵なカウンター席と4人がけのテーブル席が見えます。

「寒くないですか?」とお店の方が気遣ってくださったのですが、木が多く使われた店内、そしてオレンジ色の光の照明に包まれたこともあり、とてもあたたかく落ち着く感じがしました。外はとても冷たい風が吹いていたので、より一層ホッとします。

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飲み物は、生ビール、ハイボール、果実酒、芋や米、とうもろこしの本格焼酎、秋田、高知、佐賀、長野の日本酒など、惹かれるものばかり。ひとまず、私は果実酒の洋梨(山形)ソーダ割りを注文。他のメンバーは、ももさくらんぼ(山形)ソーダ割り、熟成梅酒のお湯割り、日本酒などを注文。食べ物のメニューは、和、洋、中と幅広いジャンルのものがあります。

飲み物とお通しが運ばれてきました。グラスや器がとても素敵でテンションが上がります。

今年もおつかれさまでした、乾杯!!

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洋梨のソーダ割りは、すっきりした甘さ、だけど梨の味が濃くて美味しい。お通しは煮物で、お出汁もとても美味しかったです。なすの揚げびたしは、大根おろし、生姜と一緒にいただきます。とろける美味しさ。たっぷり小ネギがのったもつ煮込みもとても美味しかったです。柔らかいもつ、そしてもつのエキスが混ざった味噌に、小ネギがよく合います。

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ガツネギ塩和えは、ガツの食感がしっかりしていて、新鮮さを感じました。元々珍味系が好きなこともあるのですが、これは特に好きな味で、お酒が進みます!

身体と言葉と方言と

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美味しいお酒とお料理をいただきながら、同郷のましろさんと、せっかくだから津軽弁で話そうということになりました。

2人とも「津軽弁の方が声が低くなるね」という感覚が一致していたのですが、周りは聞いているとそこまで低くなったとは感じないようです。

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振付家・ダンサーの私としては、津軽弁と標準語では身体と言語の繋がり方(落ち方)が違うのかなと感じています。津軽弁は身体にストンと落ちるので、無理なく楽に言葉を出せる(話せる)のですが、標準語は身体に少し負荷をかけて、上げるような形で言葉を出す(話す)必要があるから、声が高くなるように感じるというのが、私とましろさんの見解でした。振付家・ダンサーとしては、方言を話す身体、標準語を話す身体、どちらも興味深いです。

ちなみに、私が13年前に初めて振付したダンス作品『どこかで生まれて、どこかで暮らす。』では、こういった身体の感覚の違いや、言葉の差異を音(振付)として用いていて、このテーマは13年経った今でも変わらずに向き合っていきたいことだったりします。

こんもり泡のビールと

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そんなことを話しているうちに、私はどうしてもビールが飲みたくなってきました。たこわさび和え、ポテトフライ、自家製韓国のり、麻婆豆冨、麻婆豆冨といったら白米、を追加で注文。

オーダーを取りに来られた奥様にお店のことを尋ねると、『肴処 えん』はご夫婦で営まれていて、お店自体は隣にあった物件でオープンしてから10年になるけれど、途中でここに移転してからは5年くらいになるそうです。お料理は旦那様が担当しているそう。

ビールが届きました。泡がふわふわです。これが飲みたかった!!

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たこわさび和えは、いわゆるたこわさとは全く異なるものでした。新鮮なタコをわさびと共に味わう感じで、タコの味を存分に楽しめます。ポテトフライは、ケチャップソースと特製味噌ソースがついてきて、この特製ソースがポテトにとてもよく合います。ポテトは表面はカリッ、中はホクホク! ビールと最高の組み合わせ。

一押しの麻婆豆冨は白米と一緒に。自家製韓国のりは油断するとずーっと食べ続けてしまう美味しさでした。

谷保でつながり、変化する縁

やぼな夜

このコラム『やぼな夜』をはじめてから、気づけば2年が経ちました、いつもはお店の方に聞いている「やぼってどんなところですか?」というテーマについて、みんなで語り合います。「谷保は良い意味で、思ったより普通だった」「魅力のあるお店がひっそりとあるのがいいね」「落ち着くし、気軽でいられる」「普段着で来れるところ」などなど、いろんな意見を出し合いました。

やぼな夜

お店を出る前に、『肴処 えん』のご夫婦ともお話しさせていただきました。

ご主人は国立が地元。谷保の飲み屋さんには昔から飲みに行っていたそうで、お店を立ち上げる時もたくさんの地元の方に協力してもらったのだとか。地元の方にはもちろん来て欲しいけれど、いろんな人が入りやすい店にしたくて、縁(えん)があるようにとの思いを込めて、お店の名前を『えん』にしたそうです。ランチ営業もされており、女性一人で来る方もいるとのことで、私も今度その仲間入りをすることでしょう。

ご主人が、塩辛がおすすめだと教えてくれました(この日は残念ながら品切れ)。イカの皮を全部とり、塩漬けにしてつくっているそうで、塩辛が苦手な人でも食べやすいと好評なのだそう。塩辛だけでなく、お店で出されているものは全て手作りにこだわっているとおっしゃっていました。

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ふと、店内に飾られていた絵に目がとまります。移転前のお店を描いたものだそう。よく見ると、私たちがいた部屋の仕切り壁の上部にあった半円の木の扉が描かれています。「前のお店の入り口だった扉なんですけど、業者さんに切ってもらって、今は仕切りに使っています」とのお返事。なんと、私たちが席について最初に目にとまったこの木の扉は、かつての『えん』の扉だったのでした。

またいらしてください、と送ってくださったお二人。美味しいお料理、ごちそうさまでした。そして、素敵な時間、空間をありがとうございました!

いただいた料理は身体に吸収され、血となり肉となり、かつての扉は形を変えて今のお店の素敵なアクセントとなり。縁は巡りますね。

やぼな夜

縁とは不思議なもので、この『やぼな夜』の一回目で『旅路』さんに偶然入ったのもご縁だったけれど、気づいたら『旅路』さんは閉店してしまい、何かが起こるのはいつも突然。コントロールできないこともあるけれど、なるようになっていくものだよね。こうやって師走に5人が集まれたことも、またご縁だと思ったのでした。

肩肘張らず、普段着で、それぞれが自分の歩幅で歩けるまち、国立・谷保。ここまで読んでくださったあなた、ぜひ、やぼな夜を実際に過ごしてみてはいかがでしょうか。

『やぼな夜』 第12夜へつづく。

(取材 木村玲奈 / 編集 国立人編集部)

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「やぼな夜」とは

「やぼってどんな場所?」を探るべく、谷保の夜へ繰り出します。

木村 玲奈 木村 玲奈

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