やぼな夜 第12話 ー団地商店街の酒屋の角打ちで納涼編ー [コラム]

やぼな夜 第12話 ー団地商店街の酒屋の角打ちで納涼編ー [コラム]

2025年、夏の盛り。久しぶりの「やぼな夜」を過ごすため、取材チームは富士見台第一団地商店街・むっさ21に集まりました。

と言っても正確には、やぼな夜へ向かうべく昼から集まったので、初の「やぼな昼」でもありました。この日のメンバーは、国立人編集の優さん、そして『ふじみな夜 第1話』で訪れた優さんが営む『cometen 国立米店』でたまたま席が隣になったAさんこと、あずささんです!

今日はあずささんのお誘いで、むっさ21にある酒屋さん『広島屋』で角打ちをしながら夜を迎える予定です。

「角打ち」ってみなさんご存じですか?

角打ち(かくうち)とは、酒屋が販売するお酒を店内の立ち飲みスペース等で飲むこと、またはそのようなことができる酒屋自体を指します。

起源は、升の角に口をつけて日本酒を飲んだことから。いまでは「ネオ角打ち」などおしゃれに進化したお店もあり、おでんなどの軽食が楽しめるところもあるそうです。

広島屋さんの角打ちは、店先のアーケード内にあるテーブルで楽しめるようです。集まった私たちはまず、おつまみの買い出しへと向かいました。

まずは近所のスーパーでチップスやポテトサラダなどのおつまみを購入し、次に『やきとり・煮込み かけこうや 谷保店』で焼き鳥を購入。私は、塩でもも、やげん軟骨、上タン、砂肝、タレで鶏レバーを注文しました。お店の方に店名の由来について質問すると、「かけこうや」は「こけこっこ」のことだそう!

広島屋へと戻り、テーブルに買ってきたものを並べます。なんと広島屋の社長さんが、「暑いだろう〜」と席の周りに水をまいてくださっていました。そのお心遣いがありがたく、嬉しい気持ちになりました。

お酒は広島屋さんの店内で購入できます。お店には生ビールのサーバーもあり、みんな満場一致でまずは「生ビール!」。社長の息子さん(二代目)がサーバーから注いでくださり、準備が整いました。

乾杯!

暑い日の屋外ビールはいつにも増して最高です。

レトロビアガーデン

広島屋は、1963年に学園通りで創業し、富士見台団地ができて住人の入居が始まった1965年、今の場所に移転されたそうです。

以来、街や団地の移り変わりを見守りながら、営業を続けていらっしゃいます。社長さんは新潟のご出身で、学校を卒業されてから上京し酒屋の修行に入り、ご自身のお店を持たれたそうです。あずささんも新潟のご出身であることから広島屋へ足を運んでみたそうで、そこから社長さんともお話しするようになったのだとか。そしたらなんと年代は異なるものの同じ小学校だったそうです!

私たちがお酒と会話を楽しんでいる間に、社長さんが蚊取り線香もセットしてくださいました。優しい……ありがとうございます。

角打ちテーブルがあるのは富士見台第一団地の一階なので、団地の方やお買い物に来られた方が近くを通っていかれます。壁を挟んですぐ隣にはストリートピアノが置かれていて、私たちが角打ちを楽しんでいる間も、何人かの方がピアノを弾いておられました。

やぼな夜が始まった経緯や、最近行ったお店の話などをしながら、ビールもおつまみも進みます。焼き鳥はとてもジューシーでお肉の味が濃く美味でした。

やがて『ふじみな夜』でおなじみの富士見通りの話になり、富士見通りでお店をはじめた優さんは、「富士見通りを歩く方々はただ駅へ向かったり、帰宅するだけでなく、その道中で面白いお店や出会いを探している感じがある」とおっしゃっていて、日常の中に何か新たな刺激や小さな幸せを私自身も日々求めていることを思いました。

cometenもオープンから半年経つそうで、もしかしたらようやくオープニングパーティーのようなことができるかも、とのこと。皆さん、要チェックです! また、あずささんも cometenで新たな試みを始める準備をされているのだとか。楽しみです!

団地の片隅で、スパークリング

二杯目を頼もうということでお店の中へ。店内には、社長さんが厳選した、大手やコンビニなど他店では入手しにく いお酒たちが置かれています。その中から、見た目もおしゃれなスパークリングワイン(リースリング エクストラドラ イ・ゼクト)を選びました!

「国立に引 っ越してきたらいいよ」と、私に囁きかけるあずささん。「国立に住みはじめたばかりの頃、誰かの自転車のお下がりをもらったよね」など、国立在住のお二人の話を聞いて、毎度のことながら国立暮らしを想像してしまいます。

壁の向こうのピアノから、誰かが弾いているハッピーバースデートゥユーが聴こえてきました。生活空間に溶け込んだピアノの音を聴きながらこの場所に居ると、訪ね人である自分もここに居ることを許容されているというか、土地に受け止めてもらえているような、そんな気持ちになりました。きっと、私はどこへ行っても訪ね人として、その土地にそっと身を置かせていただくことが好きなのかもしれません。

あずささんは国立で暮らして5年なのだそう。もっと長く国立に住んでいそうな雰囲気を感じるのは、あずささんが国立を楽しもうとしている(というか自然と貪欲に楽しんでいる)からなのだろうと思いました。先日も、国立駅前で新潟の『菊水酒造』がポップアップを行っているのを見つけて、さっそく酒造の方とお話しされたのだとか。そういう行動力や瞬発力がとても素敵な女性です。

角打ちという“間借り”空間

あっという間にスパークリングワインを飲み終わり、三杯目を選ぶべく店内へ。次は日本酒にしようということで、二代目にご相談しながら 澤乃井の『さわ音(純米 生酒)』を選びました。水色の瓶も夏らしく、涼しげで素敵。お店の方に相談しながら、求めている(もしくは誰かに送りたい)お酒をゆっくり選べるのも酒屋さんの魅力だと実感しました。私は酔いがまわっていたこともあり、瓶のラムネも購入。

日本酒はさっぱりとしていて飲みやすく、どこかまろやかで優しい喉ごしでした。夕方が近づいてきて風が通るようになり、少し気温が下がって心地よい雰囲気と、お酒の酔いも相まって、角打ちの近くの通路や提灯がノスタルジックに見えてきました。時々、通路を通る方が、「お、楽しそうだね。いいねー。うまいでしょ?」と話しかけてくださったり、にっこりとしていってくださるのも、何とも和む瞬間でした。私は時々ラムネも飲みながら、話に花が咲きます。

数ヶ月前に初めて会ったあずささんと、ここ数年一緒に取材を続けている優さん、そして私、それぞれに仕事も、日々向き合うべきことも異なりますが、それでもこうやって美味しいお酒や食べもののある瞬間・時間・場を介して過ごせることは何にも変え難いことです。

本当にいろんな話をしましたが、お互いに「やぼなこと」は言わないのです。それでも、やんわりと支え合っているような、そういう空気を今回の「やぼな夜」では感じました。思い返してみると、そう思ったのは、広島屋さんが富士見台団地にあるからかもしれません。同じ敷地内に複数の住宅や店舗が配置されている集合住宅である団地には、干渉はしないけれどお互いを見守り合う、やんわりと支え合うような空気が漂っているように感じました。

今はネットで何でも調べられるし、困ったらAIに聞けば答えてくれる時代になりました。それでも私は、自分の「勘」を信じたいと思っています。やぼな夜、ふじみな夜で様々なお店を訪れてきましたが、全てその時の自分やみんなの「勘」によって導かれた先での美味しいお酒や食べ物、会話や時間、出会いだったなと。

これから少し気温も下がっていくのではと思うので(そうであって欲しいと願いながら)、角打ちが気持ち良い季節になることでしょう。ここまで読んでくださったあなた、ぜひ、富士見台第一団地商店街に身を置き、やぼな夜を実際に過ごしてみてはいかがでしょうか。

「今度はスナックに行こうか!」というあずささん。
これは、念願のスナック in 谷保 もそう遠くなさそうです。

『やぼな夜』第13話へつづく。

(取材 木村玲奈 / 編集 国立人編集部)

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「やぼってどんな場所?」を探るべく、谷保の夜へ繰り出します。

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