研ぎ澄まされた一杯

研ぎ澄まされた一杯

JR国立駅のほど近くにありながら、喧騒を遠くに感じられる空間で、一杯の珈琲をいただく。『珈琲ぶん』は、ぶんさんこと後(うしろ)さんによる、研ぎ澄まされた一杯の珈琲のある珈琲屋としてスタートしました。

2003年にオープンし、珈琲焙煎をより深く追求するために、2014年に国立駅前の小さな店舗へと移転。

そして2025年3月、より深く珈琲焙煎を突き詰めるため、駅前の店舗から離れた焙煎工房で、珈琲ぶんは次のステージへ。

もくじ

20年でたどり着いた、珈琲屋としての生き様

これまで珈琲屋として20年以上やってきました。

今回、店舗を離れて工房で焙煎に集中することにした理由は、半分はライフステージが変わったこと、もう半分は「やりきったな」という思いからです。

きっと、ビジネスとして珈琲屋をやるのであれば、誰かに任せるという形で、これまでのようにお店を開き続けることはできたのかもしれません。でも、これまで珈琲ぶんがやってきたことは、10代の頃からやりたかった「自分の珈琲をつきつめていく」という生き様の追求でもありました。

2010年代中頃にサードウェーブと呼ばれるコーヒー文化がアメリカからやってくる以前から、日本には独自の珈琲文化が根ざしていました。たとえば、銀座の『カフェ・ド・ランブル』、吉祥寺の『もか(現在は閉店)』、表参道の『大坊珈琲店(現在は閉店)』のような名店の珈琲に対する姿勢です。確立された技術の再現ではなく、そこからさらに向こう側に広がる「自分の珈琲」を追求していく人たちの背中が、珈琲ぶんの原点です。

それぞれが自分のスタイルを持ち、そこに向かい精進していく。流行り廃りや、有名無名は関係ない。

それを20年間つきつめて、自分のスタイルが見えた。それが「やりきった」と思う理由です。

理想の一杯を求めて、これからも

珈琲ぶんの流儀は、ネルドリップによる珈琲の抽出。これは20年間ずっと変わらないスタイルです。店を構える前から数えると、ネルドリップ歴は40年になります。

珈琲のおいしさは、焙煎で豆の個性を引き出すと共に、焙煎した後の豆の「飲み頃」をいかに持続させるか(豆の内部組織を破壊させない)という焙煎技術にかかっていると考えています。焙煎したてがおいしいとは、必ずしも限らないんです。

焙煎でコントロールできるのは、「火力」「圧力」「時間」の3つしかありません。この3つをバランスをとりながら調整して、珈琲豆にどのような化学変化を起こしていくのか……それが珈琲焙煎です。

いつも、最初に「どんな珈琲豆にしたいか」というイメージがあります。そこへのアプローチ方法によって、同じ豆の深煎り・中煎り・浅煎りでも味が変わってきます。

失敗しないようにするだけなら簡単です。今は焙煎機とPCを繋いで、3つの数値をプロファイリングする技術がありますから。スペシャルティコーヒーのセミナーや教室に行けば、美味しい焙煎プロファイルが手に入りますし、ネットで公開している人もいます。焙煎機の操作方法がわかれば、あとはそれをなぞるだけ。焙煎士が数人いる場合、共有するのにとても有効な手段です。

珈琲ぶんでは、そのプロファイルを毎回変えています。例えば外気圧が高いと、焙煎機のファンに圧力がかかり、排気の抜けが悪くなる。気圧が低い日と高い日とでは、15分も焙煎すると大きな差が出ます。排気だけでなく、給気とのバランスも考えなければなりません。気温30度の夏の日と、気温10度の冬の日では、同じ珈琲豆を焼くためのプロファイリングは全く異なるんです。珈琲ぶんでは、データを元にした理論と、経験からくるタイミングのずれを修正し、毎回微調整しています。

珈琲の抽出も同じです。焙煎後の珈琲豆は、時間とともにどんどんガスが抜けて状態が変わっていきます。珈琲豆の状態によって、ベストな淹れ方のタイミングも変わるんです。

基本はあるけど、毎回応用です。湯温、蒸らし時間、抽出の過程、ベストなタイミングは常に流動的です。基本をただ忠実になぞるだけでは、自らベストタイミングをずらしてしまう事になります。

20年間、この応用を繰り返してきました。実験もしながら、少しずつ上がったり下がったりを繰り返して、牛歩のようではあるけど、少しずつ向上していく。

そうして研ぎ澄まされていって、珈琲ぶんとしてのスタイルは確立できたのではと思っています。でも、珈琲焙煎については、20年やってきてもまだまだベストを追求し続けています。きっと一生の仕事です。目標は「理想の珈琲が完成した」と、自分で満足できること。そして珈琲を飲んでくれたお客様の記憶に残る一杯になって欲しいと願っています。

珈琲ぶんの豆と出会える場所

珈琲ぶんの珈琲豆は、『珈琲ぶん ROAST FACTORY』の元店舗を引き継いだ『珈琲つぐまる工作所』の店頭や、オンラインショップで購入することができます。

また、後さんが追求し続けてきた珈琲焙煎や抽出の技術は、公式サイトやインスタグラムで随時配信していきます。おいしく淹れるコツなど、珈琲にまつわる質問もお待ちしています。

店舗情報

店舗名
珈琲ぶん ROAST FACTORY
HP
http://www.coffee-bun.com/
ONLINE SHOP
https://coffeebun.thebase.in
問い合わせ
https://thebase.com/inquiry/coffeebun

珈琲 つぐまる工作所|東京都国立市中1-8-30 イトーピア国立マンション1F

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