『国立人 まちの仕事さがし』は、のびやかにはたらく人を大切にする東京・国立(くにたち)エリアの求人サイトとして、2017年に個人の活動としてスタートしました。
編集を担当している加藤優(かとう・ゆう)が駆け出しのライターだった頃、なぜ『国立人』を立ち上げようと思ったのか。そのことにより、地域にどのような変化をもたらしたいと考えたのか。地域の求人を盛り立てる黒子に徹してきたからこそ、あまり語られることのなかった想いを語ります。
「よく聞かれるのですが、国立とは縁もゆかりもありませんでした」と優さん。地元である大阪から就職を機に上京し、23区内で暮らし働いている中であっても、国立という街のことを知る機会はしばらく訪れませんでした。
「地元にいた頃に、もし国立のことを知る機会があって、暮らす場所や働き先もあったなら、国立を目指して上京してきたのになと今でも思います。それほど、国立は魅力的な街だということがわかったからです」
国立を知ったのは、勤めていたデザイン会社から「ずっとやってみたかった、地域密着型の企画営業になろう」と大手求人メディアの広告会社に転職し、昼夜を問わず働いていたときのこと。JR三鷹駅で偶然目にしたフリーペーパーをきっかけに、東京23区外に広がる『多摩地域』の存在を知ります。
「もともとエリアを限定した地域密着型の会社や仕事に興味があって、将来はそのまちに根ざして食堂なんかをやりたいなという夢を持っていました。今だと“まちづくり”という枠に当てはまるのかもしれません」
求人メディアの仕事では、数多くの地域のお店や中小企業を取材する機会に恵まれました。基本的に引き継ぎではなく新規開拓。「地域のお店や中小企業はどんな理念を持ち、どんな想いを持つ人が働いているのだろう」という純粋な興味から、ものを売る営業ではなく相手を知る取材というていで地域に飛び込んでいった結果、仕事も広がっていったそうです。
「取材を重ねていく中で、まちの中小企業の個性豊かな面白さに気がつきました。すごい有名人ではなく、地域で普通に暮らしている社長や社員が、そこにしかない創意工夫をして、そこにしかないポリシーを持ちながら仕事をしている。その積み重ねが、まちを創っているんだと思うようになりました」
一方で、既存の求人メディアの枠組みの中で、その想いを十分に伝えていくには限界があることも感じました。給与や条件といった表層的な面が強調され、その会社らしさ、その人らしさが届きづらく、応募する側もエントリーの数を求められていたりする。優さんも経験があるといいますが、仕事さがしという入り口に立った時に「なんだか、ワクワクしない」のです。
「求人メディアに掲載することが、一過性のインスタントなものでなく、長い目で見て会社・お店・地域に還元されていく、その地域の特性になるような地域密着型の求人メディアがあるといいのに」
国立を訪れたのは、『ほんとまち編集室』メンバーが運営するコミュニティスペース『国立本店』がきっかけでした。
「『国立本店』には、国立を知るきっかけになるような本や情報誌がたくさんあって、メンバーも国立好きな人ばかり。仕事が忙しかったので月1回も参加できたかどうかわからないけれど、国立は気になるまち、いつか住んでみたいまちの一つになっていました」
会社を辞めた後、いつの間にか積んでいた取材の経験からフリーライターとして仕事をもらうようになりました。その流れで、温めていた地域密着型の求人メディアのアイデアを周囲に話していたところ、個人の活動として国立で求人メディアを始めることになりました。
国立市の標語である「人間を大切にする」と、国立で取材をした人たちの共通項として浮かび上がってきた「他人に言われたことではなく、自分で考えて人生を選択し、自分で仕事を創っていく」姿を掛け合わせて、「のびやかにはたらく人を大切にする」を理念とする求人サイト『国立人』が生まれました。
「のびやかにはたらく」人たちの姿は、ぜひ『国立人』に掲載されている取材記事からご覧ください!
個人の活動の中でも、求人営業で得た経験と、取材した内容を記事で表現することで、通算50人以上の求人マッチングに成功。「国立人から応募してくれた人にはいい人が多いし、入社までの話がスムーズに進む」と話す経営者や、「国立にこんなに自分に合う働き先があるなんて知らなかった」という求職者の声も多く、入社後のミスマッチによる退職は0だったそうです。
2021年、個人活動での限界を感じたことをきっかけに、『国立人』の運営はまちづくり会社『合同会社三画舎(さんかくしゃ)』が手がけるようになりました。優さんの夫が代表をしており、「これまで地域で営まれてきた歴史・文化と、これから先の人の想いを大切にするまちづくり」を理念に掲げています。
それを機に、『国立人』は「のびやかにはたらく人を大切にする」ための求人マッチングはもちろん、『国立暮らし1年目』などの地域の人のコラムも掲載し、多様な「まちの入り口」となる求人サイトとしてリニューアルしました。
「働き方も生き方も、色々な選択肢が広がっている今、私が魅力に感じた国立らしい働き方や生き方は、より注目を浴びると思います。掲載してくれる会社やお店だけでなく、地域の人と一緒に作り上げていく求人メディアにしていきたい」
国立を知る人がその魅力に気づくことはもちろん、上京先の選択肢としても国立を挙げる人たちが全国に増えていくように。人が創っていくまちは、また新しく集まってくる人の手によって、未来へと続いていくのかもしれません。
東京都国立市中1-7-62 国立本店内