街の中心で“キウイフルーツ”を狩る?! [コラム]

街の中心で“キウイフルーツ”を狩る?! [コラム]

都心で用事があり、出掛けた休日。予定が早く済んでしまったので、『東京ミッドタウン日比谷』などをブラブラ。コロナ禍だというのに、やっぱりみんなお出かけしたいんですね。静岡に住んでいたころは東京にやってくると、話題のスポットやおしゃれな街並みを嬉々として歩き回っていたはずだったのに、何だろう、この疲労感は……。

気が付けば手土産の甘味が入った紙袋を片手に、さっさと中央線に乗り込んでいました。そして、国立駅に到着。ホームから駅舎越しに見える大学通りもすっかり秋の装いに。季節の移り変わりを、きらびやかな街のディスプレイではなく、生い茂る木々が織り成す景色や匂いから感じ取れる方が、ずっと贅沢だな……と思うこの頃です。

先日、9月から参加している『国立本店』の活動のひとつである “おでかけ”で、キウイ狩りに行ってきました。参加者はメンバーが中心。活動をけん引してくれている主宰者さんが取りまとめてくれたおかげで、まるで遠足のような楽しいひと時を満喫してきました。

「国立駅から徒歩で行ける住宅街の中にキウイ園があるので、現地集合で……」とのアナウンスに、自宅から自転車で出発。場所は一橋大学グラウンドの裏当たりのようです。

ところが……近くまで来ているはずなのに、あれ?入口が見つからない。この辺りは大きな庭を持つ立派な住宅が多く、外から見ただけではキウイ園なのか、庭なのか判別がつきません。辺りをウロウロしている私を見かけた主宰者さんが声を掛けてくれたお陰で無事、到着。入口の“キウイフルーツ直売”というのぼりがなかったら、通り過ぎてしまうような住宅地の中に『澤登キウイ園』、ありました!

ここは今でこそキウイ園ですが、山梨生まれの澤登晴雄氏が、国立市に『農業科学化研究所』を設立し、ここで巨峰栽培技術を確立するなど、日本の葡萄産業発展に貢献した場所だったのだとか。この地で生まれた品種は、日本国内はもとより海外にまで広まり、国産ワインの普及に尽力したのだそうです。

その後、昭和49年に『日本キウイフルーツ協会』を設立。有機農業によるキウイフルーツの栽培技術の指導にもあたり、日本国内でのキウイ栽培が定着、現在に至る……。という入口の石碑を読み、“国立とキウイフルーツ”という思いもよらなかったつながりや、ここが葡萄栽培発展の地であったことに深く感銘。文教地区のイメージが強かった国立と農作物との関わりに、興味が沸きました。

キウイってどんな風に育っているかご存じですか? まさに“鈴なり”という言葉かぴったり。たわわに実ったキウイを片手で抑え、くるくるっと回しながら根元を軽く折ると、気持ちよく枝から外せます。

『澤登キウイ園』には現在、『くにたちイエロー』を含む5種類ほどのキウイが栽培されているとのこと。確かに場所によって、細長いものや丸いもの、ちょっと角張ったものなど、同じキウイながら形が少しずつ違うものがいくつも収穫できました(オレンジの実は『カラスウリ』。これは残念ながら食べられません)。

秋晴れの空の下、「ここのキウイは丸い形みたい」「あっちは、細長かったよ」と、楽しくおしゃべりをしながら収穫していると、あっと言う間にカゴの中には大量のキウイが。ちょっと採りすぎちゃったかな……。でも大丈夫!もぎ取りは、“100g60円”と大変リーズナブル(しかも、入園料無料!)。この量で1000円くらいでした。

とは言え、大学生の娘と二人暮らしの我が家。こんなにたくさんのキウイ、一体どうするつもり……? ビタミンCや食物繊維など豊富な栄養素を含むキウイはそのまま食べるのはもちろん、ジャムやスムージー、果実酒、ドライフルーツなど、思いつく限りいろいろアレンジできそう。キウイ園をこの地に作ってくださった澤登さんに感謝しながら、秋の恵みを美味しくいただきます。

少し足を延ばせば、名湧水があるサンクチュアリに

キウイ狩りの後は『国立本店』のメンバーと一緒に“おでかけ”を続け、国立市と立川市の境目にある『矢川緑地』まで足を延ばしました。『東京都の名湧水57選』に選ばれている美しい湧水池を有するオアシスもまた、住宅街の中にひっそりと佇んでいました。

土曜日の昼過ぎとは思えないほどゆったりとした時間が流れ、水浴びをする鳥の鳴き声と風に吹かれた葉音が心地よく耳に届く贅沢な空間は、まさに都会のサンクチュアリ。

『矢川緑地』は、『東京における自然の保護と回復に関する条例』に基づいて、1977年(昭和52年)に保全地域に指定されているとのこと。この素晴らしい自然を守るために、ボランティアの方たちが手入れをしてくださっているそうです。本当にありがとうございます。

夏に訪れた『矢川緑地』は猛々しいほどに木々が生い茂り、水面に映る緑までもが眩しい印象でしたが、今ではすっかり落ち着いた秋の装いに。四季の移ろいを、目や耳からも感じられるって素敵ですよね。

「いろんな食材を持ち寄って、みんなでピクニックなんかしたら楽しそうですね」と話しながら歩く、国立さんぽ。緑の中にいると心まで開放されるようで、自然と会話も弾みます。

今期から『国立本店』にメンバー入りした30代の女性、親子で参加しているグラフィックデザイナー、本と猫が好きだという会社員、フリーランスでデザインやイベントの企画に携わっている方など、年齢も職種も違う人たちが国立という街で出会い、同じ時間を共有している不思議。今ここに集っている素敵なご縁に、感謝したい気持ちでいっぱいになりました。

キウイ狩りのあとに、緑地散歩まで楽しめた秋の一日。住宅街と自然が不思議なバランスで街を構成している国立の面白さをまたひとつ、知ることができました。今度は、まだあまり開拓できていない国立のもう1つの顔『谷保』エリアの魅力も探っていきたいと思っています。

(書き手:小倉一恵/国立暮らし1年目)

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「国立暮らし1年目」とは

外から見たときと、内側から見たときのイメージは少し違います。そんな『国立暮らし1年目』だからこそ見えてくるものを綴るコラムです。

小倉 一恵 小倉 一恵

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