健やかに漂うスナック水中

健やかに漂うスナック水中

スナックに行ったことはありますか?

飲食店でもバーでもなく、お酒を味わいながら音楽を聴いたり、時には自分も歌ったり、演奏してみたり。気分がいい日も、落ち込んでいる日も、どんな時も気さくなママやマスターが迎え入れてくれる、家に帰る前にちょっと寄りたい「止まり木」のような場所。

『株式会社水中』では、全国各地にあるスナックを、“継承”と“リブランディング”という形で残していくことを目指しています。

「2022年4月から一年間、『スナック水中』のママとしてお店に立つ中で、水中グループらしいスナックのあり方が見えてきました。私たちが大切にしているのは、お客さんとスタッフがともに楽しく過ごせる、健やかなコミュニティを築くこと」と、代表の坂根千里(さかね・ちさと)さんは話します。

そのコミュニティの中心に立つのは、ママやマスター。話をよく聞いて共感したり、時には鼓舞することもあるけれど、相手の色には染まらずに、いつでも凛と立っている。スナックのママは、坂根さんにとって「人生をかけて目指したい、こうありたい」姿でもあります。

もくじ

スナック水中、生まれる

昭和初期に一橋大学が都心から移転してきたことをきっかけに、学園都市として発展を遂げた国立。

その南側に広がる谷保天満宮を中心とした谷保(やぼ)地域は、昔ながらの店と新しい店が入り混じる、レトロな人情味を感じるエリアです。

そんな谷保駅前で約30年営業していた『すなっく・せつこ』が継承され、新たに『スナック水中』として生まれ変わった時は、多くのメディアが取り上げて全国で話題になりました。

スナックを継承した坂根さんが、一橋大学の新卒だったからです。

大学一年生の頃から「まち」に興味があり、将来は起業したいという強い想いを持っていた坂根さん。学生サークルの代表になり、谷保でゲストハウスを立ち上げて運営しながら、「人生をかけてやりたいことは何だろう」と模索し続けていました。

それは、国立での活動や人とのつながりの中で見つけることができました。

「まちの人に連れてきてもらった『すなっく・せつこ』で、ママに声をかけてもらってアルバイトをはじめました。せつこママは、私が代表をしていた谷保のゲストハウスのことも見てくれていて、就活を始めた大学3年生の時に『うちを継がない?』と声をかけてくれました。すごいなママ、自由だなと思ったけれど、就職ではなくスナックを継いで経営することについて、そこから本気で考えはじめました」

調べていくとスナックはコンビニよりも数が多く、「スケールする事業に挑戦したい」という想いと、スナックのママのような生き方・働き方が坂根さんの理想と合致しました。

それからは銀行の融資やクラウドファンディングなどで資金を集め、2022年4月の大学卒業と同時に一店舗目の『スナック水中』をオープン。現在はママとして店に立ちつつも、店舗を支える企画・マーケティング・広報などのバックチームや新店舗開発チームなど、グループ全体のマネジメントを手がけています。

目指す未来は、10年で100店舗のスナックの継承と、そこで育まれてきたコミュニティの継承です。

目標を高く持ちつつも、肩肘張らず自然体で明るい坂根さん。どんな人とも打ち解けられる不思議な雰囲気は、若手起業家というより「スナックのママ」のイメージにぴったりです。

楽しむためのマインドセット

水中グループでは、「お客さんとスタッフがともに楽しく過ごせるコミュニティ」を大切にしています。その中心には、自分も心から楽しみながら立っているママやマスターの存在が不可欠です。

未経験からスナックのママをはじめた坂根さんが伝えたい、「ママやマスターが最初にやること」は大きく3つ。まず大前提となるのが自分のマネジメント、次にスタッフのマネジメント、そしてお店のマネジメントです。

「週5日間、最高のパフォーマンスでお店に立ち続けるには、『睡眠・食事・まあまあの運動』で心身を整えることが大切です。シンプルですが、仕事が溜まるとつい後回しにしてしまい、私も何度も後悔しました。なので、ママやマスターが最初にやることは、『長く楽しく働けるように、無理をしない』というマインドセットを持ち続けること。水中ではお店に立つ人のバックアップ体制を整えているので、一人でなんとかしようと思わずに、周りを頼ってほしいです」

お店に立つ人が目の前のコミュニケーションに注力できるよう、日々のSNS投稿や、集客のための広報、売り上げにつながる施策の実施、経理などは、それぞれの専門スタッフがサポートします。

自分のパフォーマンスがよくなると、お店全体への目配りがきき、お客さんやスタッフのちょっとした変化にも気がつきやすくなります。

スタッフの様子がいつもと違うことに気づいたら、話を聞いたり、面談の機会を設けることで、早い段階で悩みのタネに気づけることも。良質なコミュニケーションはスタッフのパフォーマンスを高めることにもつながり、その雰囲気はお客さんにも伝わって、やがてお店全体のカラーを作っていきます。

ママたちは、エールでつながる

2024年、坂根さんはプライベートでもママになります。

「子育てと仕事の両立は、女性の永遠のテーマですよね。仕事が大好きで、ずっと働き続けたいからこそ、家庭との両立はずっと模索していくと思います。子育て経験のあるスタッフやお客さんに教わることは多くなりそう」

そんな坂根さんを支えるスタッフのぴろさんは、2人の子どものママ。お子さんが大きくなって復職を考えたものの、事務職は性に合わず、「お酒と歌とコミュニケーションが好き」なことから『スナック水中』で働きはじめました。

「『スナックで働きたい』と言うと、いわゆるスナック勤めのイメージを思い浮かべた家族は最初いい顔をしませんでした。でも、水中グループのスナックには若い女の子も一人で来れるし、爽やかなイメージなので、『水中で働いてます!』と自信を持って周りに話しています」

大学生のお子さんがいるスタッフのかなこさんは、昼間は本業を持ちつつ、本業に響かない夜の時間を活用して働いています。

「スナックのコアタイムは夜の時間。だからこそ、子育て中の方の仕事場としてもおすすめです。家族で晩ご飯を食べて、子どもが寝ている間に働けるので、子育て中でも社会との接点を持つことができます。水中グループのスナックは、昔のスナックのイメージとは全く違って、地域のコミュニティのような場なので安心ですよ」

話を聞いていると、スタッフと坂根さんは信頼関係だけでなく、「応援」の気持ちでもつながっているようです。

「メディアを通して見る坂根さんはしっかりして強く見えるけど、実際に会って話すと20代の女の子らしい弱い部分がたくさんあって。だから大変な時は守ってあげたい。10年で100店舗継承という目標にも、何か力になりたいと思っています」

「用意されたエリートの道ではなく、『やりたいこと』を選んだ千里ママをそばでサポートしたい。これから彼女は何を見て、何を為していくのかを見守りたいし、応援していきたいと思います」

「仕事が好きで抱えすぎてしまうからこそ、誰かを頼るマインドセットを心がけています」という坂根さん。弱い部分も発信するからこそ、お互いに応援し支え合う、水中グループはそんなチームなのかもしれません。

コンビニよりも数が多いというスナック。その数だけママがいることを思うと、スナックとは女性にぴったりな仕事かもしれません。坂根さんが増やしたいと考えている、女性も肩の力を抜いて安心できる場所。すでに継業の話が次々と舞い込んでいる水中グループを通して、懐かしくて新しいスナックは、これから全国へ広がっていきます。

会社情報

会社名
株式会社水中
店舗名
スナック水中(国立市富士見台1-17-12 エスアンドエスビル1F)
ミュージックバー『NO TRUNKS』の承継/後継店(国立市中1-10-5 国立金水ビル 5F)
本社所在地
東京都国立市富士見台1-17-12
HP
https://snack-suichu.com/
問い合わせ
メール chisato@snack-suichu.com / 電話 080-4430-1236

新店舗開発・ブランディング業務(業務委託契約)にご興味がある方もお問い合わせください。

東京都国立市富士見台1-17-12

加藤 優 加藤 優

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